ストーリー

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Re: 
たぶん俺は屋上でお前の前でも後ろでもなく隣にいることが多い。しかも右側。それにはちゃんと理由がある。俺が右利きで、お前が左利きだから。そうすれば隣に座ったときに腕がぶつからない。
俺の中で昔から“左利き”とゆう人種は特別だ。いゃ、訂正、“左利き”という人種を特別視する程度は年々上昇傾向だ。なんか秘めた才能を持っていそうなのだ。だからお前が左利きだと知ったとき俺は納得したしちょっと羨望だった。 
今まで欲しいと思うものはたいがい手に入ったし、人を羨ましいなんて思ったことがあっただろうか。いゃ、これがはじめてだ。 
今からでも左利きになればいい、そう提案されても断るだろう。俺のは才能じゃない。お前のは生まれ持った才能だ。

ある日俺たちは音楽室にいた。音楽をたしなむためじゃない学校で一番広い教室だからだ。お前は閉所を嫌う。
『秘密守れる?』と悪戯っぽくお前の言う意味がわからなかった。次の瞬間、君の長くて細い指がピアノを奏ではじめた。ふだんクラシックなんて聞くことない俺でもお前の音に感動した。
そして何よりピアノを弾くお前が綺麗だった。

表す言葉があるとすれば―――――優美。
『ドビュッシーすきなの。クラシックを14年やってる。でも高校では話したことないから秘密ね』やっと何が秘密かを理解した。 
これだけの才能があればむしろ自慢するだろぉ、とおもったが言わなかった。
秘密、ね。
この日左利き特別視指数はまた大幅に上昇した。
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