anniversary(小説)
□危険な条件 お試し
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危険な条件(一部抜粋)
「……ッ」
言葉が詰まる。
桐嶋の声が面倒くさそうに云ってきたから……。
早く電話を切りたくて仕方がないと、その声が云っていたから……。
腹が立った。
来るなと云われた事がじゃなく、桐嶋の体調不良に何も出来ない自分が。
高野のときは付きっきりで看病した。電話一本で呼び出されて、そのまま泊まり込んで朝までずっと看病した。来なくて良いと云われたあの時だって押し掛けて無事を確認しなければ落ち着かなかった。
けれど桐嶋は大人だから、体調不良を悟らせない。
大人で、父親だから。
自分の面倒は自分でみてしまう。
それがムカついた。
全部は無理でも、少しは頼ってほしい。
携帯を握る手に力をこもる。
「俺が行ったら迷惑か?」
『そうじゃない。けど来るな』
「桐嶋さん。俺が会いたいって云っても駄目か?」
『……ッ』
桐嶋が息を飲んだのがわかった。
それは驚くだろう。自分でもこんな事云うなんて思っていなかった。
普段、桐嶋からちゃんと言葉にしろと散々云われ続けた類の台詞だ。恥ずかしくて自分らしくないからと拒み続けていたが、今はすんなりと出てきてしまった。
『お前、俺を誘惑するな』
「顔見たいんだよ」
『横澤』
「桐嶋さん。今、何処にいる?」
電話口でため息が聞こえる。
やはり駄目だろうか。
『横澤。今な、絶好の隠れ家にいるんだ。鍵は俺が持ってるし、誰も入って来ない』
「何処だよ、それ」
社内にそんなところあるのか不思議だ。
『今来たら、セックス出来るぜ』
「……は?」
『会社で俺とセックス出来るなら来な』
試されるような口調。
いや、横澤が行けないようにされているのだろう。直接的な云い方をされたのがその証拠だ。桐嶋が本気で横澤と会社でしたいなら、もっと別の云い方をして横澤を誘きだすはずだ。
『最近ご無沙汰だし、お前も溜まってるだろ?』
〜危険な条件をご覧ください〜
ずっとやりっぱなしのお話のような気がします。