anniversary(小説)
□ジャプン編集長の狙い
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『ジャプン編集長の狙い』
朝、家を出るときに娘の日和が気になることを言っていた。
「ねぇパパ、成人式って大人になるお祝いなんでしょ?」
朝ご飯を食べているとき、テレビで成人式の特集を流していたのだ。
そういえば、週明けは成人の日だった。
桐嶋はコートを羽織りながら3連休の予定を立ててみる。
「そう、大人になったお祝い。日本では二十歳でようやく大人だと認められるからな」
「式では何をするの?」
「学校の始業式と変わらないよ。偉い人が話すのを聞いてるだけ。あ、女の子なら振り袖着て出席するんだぞ?ひよ、絶対似合うだろうな」
「へへ、ひよもね、テレビに映ってたお姉さんみたいに綺麗なお着物着たいな」
「よーし、パパひよの為に頑張って稼いで、綺麗で可愛い振り袖用意してやるからな」
「パパ気が早いよ!」
そして、玄関で靴を履いているときに……。
「そうだ、お兄ちゃんはスーツだったけど、パパはお着物着たの?」
「え、スーツって横澤に聞いたのか?」
お見送りするためについてきた日和を振り返ると、日和は可愛く左右に首を振っていた。
「ううん、前に写真を見せてもらったの。おうちの掃除をしてたら見つけたって。見たいって言ったら持ってきてくれたの。パパには内緒だぞって」
それにはちょっと気分が悪いが、横澤の性格を考えれば絶対自分には見せたくないと思うだろう。
桐嶋だってガキ臭い自分を恋人に見られるのは歓迎しない。こういうところでプライドを発揮してしまうのが男の悲しい性だ。
だが横澤には悪いが、桐嶋は横澤の男の部分も好きだが、彼の可愛い部分もお気に入りなのだ。
日和には口止めしたらしいが、こうしてたわいもない中で桐嶋に話がいく事までは考えていなかったらしい。
ったく、つめが甘いんだよ。
可愛いったらねぇな。
「パパに見せられないなんて、横澤は悪い子だな。後でお仕置きしてやらねぇと」
「あー、ダメだよ!」
「冗談だって」
本気で心配してくる日和に、桐嶋は頭を撫でて安心させてやる。
大丈夫。横澤をいじめたりなんかしねぇよ。
日和が心配する事はまったくない。
お仕置きっていっても、最後は絶対真っ赤になりながら気持ち良いって言わせるし、泣かせてやるし……。
「それじゃ、パパそろそろ行くな」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」
「はいはい。あ、ちなみにパパの成人式は袴だったよ」
桐嶋は日和に手を振って家を出た。ちょうど止まっていたエレベーターに乗り込む。
桐嶋は隠そうと思っても隠せない笑みを、マフラーを引き上げて隠した。
「……二十歳の横澤か」
すげぇ、興奮する。
おわり