5927(長)

□【8】心情
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家を出て、あてもなく歩く。


何も考えたくなくて外に出たのに、さっきのリボーンから聞いた話ばかり頭を巡る。


無理矢理別れさせられて、命の危険に及ぶほど衰弱した獄寺と、ショックのあまり心を壊してしまった獄寺の恋人。


お互いそうなってしまうほどに二人は愛し合っていたんだと思うと、気分がだんだん沈んでいく。


「・・・隼人はどうやって立ち直ったのかな・・・」


リボーンは、その辺は詳しく教えてくれなかった。



「あ・・・」


ふと立ち止まる。


考え事をしながら歩いていると、いつの間にか獄寺と再会し話を聞いてもらった場所まで来ていた。


「ここが、俺たちの始まりの場所だったんだよね、そういえば」


誰にともなく呟いて、ツナはぽすんとその場に座る。


目を閉じれば、今でもあの日の獄寺の優しさが蘇る。


『ゆっくりでいいから。吐き出して楽になるものは、全部吐き出せ』


ぽんぽんと、背中を撫でてくれた。


あの時はまだ、ツナもだったが獄寺もこんな関係になるなんて思ってなかっただろうと思う。


獄寺は、あまり自分の過去を話したがらない。


付き合うきっかけになったあの日のキスだって、さっきリボーンに聞くまで誰と間違えたのか知らなかった。


「俺に似てるのかな、その人」


『・・・な、・・・さ・・・』


あの時寝ぼけていた獄寺は、ツナの顔を見てふわりと笑い何かを言った。


「もしかして・・・恋人さんの名前だったのかな・・・」


気になるけど、聞けない。聞くのが怖い。


リボーンは、獄寺のツナへの想いを疑うなと言った。


疑うつもりはないけれど、もしそれを聞いて「ごめん」なんて言われたら、足下から崩れ落ちてしまいそうで。


「・・・ツナ君?」


ふと聞き慣れた、懐かしい声にツナは顔を上げる。


そこにいたのは、不思議そうにツナの顔を見る京子だった。


「・・・京子ちゃん」


「久し振りだね。隣、座っていい?」


「うん」


ツナの返事ににこっと笑って、京子はツナの隣に座る。


京子の事が好きだった頃は近付くだけでもどきどきで緊張してたのに、今はこうして隣に座って二人きりのシチュエーションでも、好きだった頃のそれはない。


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