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□【5】10日の記憶
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「・・・いい?「10日後」だよ。「10日後」、必ず戻ってきて。でないと違う世界の別の時間軸に飛ばされるかもしれない」


「脅すなよ。大丈夫だっての、ちゃんと守るから」


「痛いよ!」


少し強めに頭を小突かれて、入江は頭をさすり。


「それじゃ。10分後、無事に君が戻ってくる事を祈るよ」


「ああ。サンキュな」


入江に向けるにしては珍しく鮮やかな笑顔で、「22歳の獄寺」は過去に飛んだ。


(さて、ここからが正念場だ)


目の前で、間を置かずぼわんと煙が上がる。


現れたのは、何も事情の分からない「12歳の獄寺」。


「22歳の獄寺」は言った。ツナに会うまで、自分は周りの全てが敵だと思っていたと。


人を見れば噛みつく事しか知らない子供だったと。


(何で、そんな切れ味鋭いナイフみたいな子の相手を僕がしなきゃいけないんだ・・・)


「「敵役」を演じてた時みたいな威圧感見せとけよ。本物の銃でもちらつかせときゃ、さすがにビビるからよ」と、獄寺は言った。


ここから外に出て、アジト内を歩かせるわけには行かない。


自分が頑張るしかないと、無理矢理顔を作りキィと椅子を鳴らしたところで、「12歳」の獄寺と目が合った。


「・・・誰だてめえ。ここどこだよ」


「やあ、獄寺 隼人。悪いが、君にはしばらくここにいてもらう。すぐに元の場所に戻してやるから、今は静かにしていてくれないか」


「12歳」の獄寺は、不機嫌を隠す事も臆する事もなく、入江を睨みつける。


「ふざけんな。何でてめえなんかにそんな事言われなきゃなんねえ・・・」


ドン!


威嚇で撃った銃の弾が、床に座り込んでいる獄寺の足先15センチにめり込む。


「静かにしていろと言っただろう。自分で言うのも何だけど僕は頭脳派の人間でね、射撃は得意じゃないんだ。大人しくしててくれないと―――次はうっかり当ててしまうかもしれない」


意識して感情を押し込めて無表情な顔で見ると、獄寺が緊張で息を飲んだのが分かった。


(ひとまずはこれで大人しくしてくれてる、かな・・・?)


ほっとしたのも束の間。


「正一君いるでしょ?入るよ」


この時間には滅多にここにこないはずの、今のこの状況が一番バレてはいけない人物の声が、聞こえた。


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