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□【4】未来の秘密
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スーツを着て、ネクタイを締める。
隙のない隼人の仕草に、それを見ていた綱吉は「かっこいい・・・」と漏らした。
「もう行っちゃうの?まだいてもいいのに・・・」
「いえ。帰れなくなる可能性があるから必ず帰ってくる日は守れと、いり・・・俺をこの時代に飛ばしてくれた協力者に言われてますので」
「それが今日?」
「ええ。「過去に着いた日から数えて10日」、そう言われましたから」
「記憶取り戻せなかったらどうなってたんだろうね」
「さあ・・・あいつはやけに心配性でプレッシャーに弱いので、俺を帰す手段を正規の帰り方とは別に用意してたかもしれませんね」
「協力者って?」
「いずれお会いになりますよ」
「また「いずれ」?」
「ええ、「いずれ」です」
止めどなく続く会話。
少しでも隼人と長く話していたい綱吉から一方的に質問責めにしているのだが、そんな綱吉も可愛いと思ってしまう隼人は微笑みながら丁寧に一つ一つ答える。
「ねえ、瓜って結局隼人君の猫なの?」
「はい。14歳の頃に「見付け」ました」
「いいな瓜は、ずっと隼人君と一緒にいられて」
えい、と喉を指でくすぐると、気持ちよさげに「にょおん」と鳴いた。
少し寂しげな綱吉のそんな様子を見て、隼人は締めたばかりのネクタイを引き抜き、それを丁寧に折り畳んだ。
「綱吉さん、これをお持ちください」
「え?」
「あなたに預けます。「10年後の今日」、俺にお返しください」
「10年後の、今日?」
「はい。そして、贅沢を言わせて頂けるのであれば、あなたに締めていただきたく思います」
暗に、絶対一緒にいるからと言葉に含ませて。
綱吉もそれに気付いて、嬉しそうにぱああっと笑ってコクコクと頷いた後、ネクタイを大事そうに胸に抱き抱えた。
「今の記憶なくしちゃうのなら、10年後の今日隼人君が帰ってくるまでは、このネクタイの事は隼人君にも内緒だね」
(・・・・・・あ)
その綱吉の言葉を聞いて、気付いてしまった。