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□【3】獄寺さんの視線の先には
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獄寺さんは、10年前に10代目と会う前すでにスモーキン・ボム―人間爆撃機と呼ばれ、マフィア界では有名な存在だったと聞いた。
一匹狼で誰にも心を開かずどこにも属せず、ファミリー入りを志願したすべてのファミリーに断られ続けた事で、誰も信用しなくなっていたと。
いつも誰かを睨みつけ笑顔は見せず、人類皆敵だと思っていたんじゃないかと。
だけどそれが、10代目と出会って変わった。
態度でも言葉でも10代目を慕い、彼の隣でよく笑い、敵に狙われるとその身を張って10代目を守ったという。
自分の命を省みないそんな彼の姿に、10代目は手放しで喜んだ事は一度もないと。
もっと自分を大切にしろと自分のために泣いてくれた10代目に絶対的な忠誠を誓い、何があろうと裏切らない彼のその姿勢は敵ですら感心するほどだと。
10代目は知らないらしい。
「誰にも懐かない狼を手懐けた強者」として、ボスになるにしてはあまりにも幼いその容姿よりもそっちの方が皆を驚かせ。
そしてさすがボンゴレの時期後継者候補に選ばれるだけの事はあると有名になっていた事を。
9代目直属の暗殺部隊ヴァリアーと、正当な10代目後継者の証であるボンゴレリングをかけて争った争奪戦の時も。
命に代えてもリングを手にしようとした獄寺さんを10代目は怒鳴りつけた。
『ふざけるな!!』
結果獄寺さんは負けたけど、10代目はリングを奪われた事に嘆かず、リングより命を取り自分の元に戻ってきた彼の姿に安心して泣いたのだと。
『よかった・・・獄寺君・・・本当に、よかった・・・!』
「・・・はぁ」
彼らの過去を知れば知るほど、その絆の深さを思い知らされる。
「別に、思いを伝えようとか、奪ってやろうとか、そんな、命知らずな事、考えちゃいない、けどさ・・・」