時とともに変わらないもの
□18.正統後継者*獄視点*
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傷つけるつもりなんてなかった。
無防備に近づいてくる綱吉に、ほんの一瞬だけ我を忘れてしまった。
「や、だ・・・やだ、ごめ、獄で、ら君、許して・・・」
そんな小さな、とても小さな今にも消え入るような懇願する声にはっと我に返って。
「ひっく・・・ごめ、なさ、」
俺の下で泣く綱吉に、自分が何をしようとしたのか分かって、愕然とした。
綱吉を傷つけた。
傷つけた。
傷つけた。
そして――――泣かせた。
俺は最低な人間なのに。
「お前、ほんと無防備だよな。さっきあんな事されたのに、怖くねえのか」
「怖くないよ。だって今の獄寺君の手、すっごく優しいもん」
そういって、本当に恐怖心なんか全くないかのようにすり寄ってくるから。
「はは。えらく信頼されてるもんだな、俺」
そんな綱吉の優しさが俺にはもったいなさすぎて、俺はこぼれそうになった涙を隠すように強く綱吉を抱きしめた。
最初は痛いよ、とか、笑ったりとか、あったかいねぇと呟いていた綱吉は、やがて何も言わなくなって。
「・・・綱吉?」
体を離して覗き込むとそこには、すぅすぅと安心しきった表情で眠る幼い顔。
その無防備な額に、触れるだけのキスをして。
俺は誓った。
二度と傷つけない。
二度と泣かせない。
だから。
この気持ちは隠さないといけない。
俺が理性を吹き飛ばしてしまった、本当の理由。
綱吉を、本気で好きになってしまってるからだなんて。
気持ちを伝えたら、綱吉はきっと警戒する。
綱吉の信頼を、めちゃくちゃにぶち壊してしまう。
もし、綱吉に嫌われたら。
「・・・あ・・・っ・・・」
驚いた。
想像しただけで、体から血の気が引いた。
冗談じゃない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
そんなの、絶対に嫌だ。
綱吉の信頼を失うくらいなら、綱吉の笑顔が見れなくなるくらいなら。
この気持ちは、ずっとずっと隠し通してやる。
「大丈夫だ、綱吉」
もう、さっきみたいな怖い事、二度としないから・・・。
「だから俺を・・・嫌いにならないでくれ・・・」
そっと抱きしめて、また少しだけ泣いた。