ORIGINAL USUAL DAYS
□トリュフに口づけ
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日付の変わったばかりの2月11日。
こんこんと、控えめに獄寺の部屋の扉をノックする可愛い訪問者。
小さく「ごくでらくん、」と名前を呼ぶその声に、獄寺はとろけるような笑顔になって部屋の扉を開けた。
「今晩は、10代目」
腰に手を回して中に招き入れると、途端に嬉しそうな笑顔に変わる可愛い恋人。
「えへへー」
嬉しそう、ではなく、獄寺の顔を見て本当に嬉しくなったツナは、笑顔のままで獄寺に抱きつく。
「獄寺君、何してたの?」
「秘密です」
ちらりと背中越しにツナが見たのは、意外とこまめな獄寺がまとめている自分が今まで作った料理のレシピ本。
「DOLCE」と流暢な文字で書かれているそれに、ツナは少し笑った。
「えーいじわる。教えてよ」
「おや。それでしたら交換条件です。明日、なぜ朝からコスモ寮に行くのか教えてくださったら、俺も何をしていたのかお教えします」
「それは内緒なの」
「でしたら俺も内緒です」
「ふふっ、ならしょうがないね」
「はい」
何をしていたのか、何の用事があっていくのか。
それには見当が付いているし、気付かれているのも分かっている。
それでもお互いに深く追求しないのは、「何をくれる(くださる)んだろう」と、楽しみにもしているから。
獄寺がツナの頬を包み、小さくキスをする。
「たりない、もっとちゃんとして」
早く早く、とせがむツナに笑って、さっきより深めのキスをする。
「んー、気持ちい。今日もいい夢見れそう」
「そうですね10代目。俺もいい夢見たいので、今日はここで一緒に寝ませんか?」
「!」
ツナが最初からそのつもりでこの時間に来た事も、獄寺は気付いている。
それを「自分のわがまま」に変えたのは。
「もう、獄寺君寂しがり屋さんなんだから」
可愛らしい花のように微笑んだツナが、腕をめいっぱい伸ばして背中をぽむぽむと撫でてくれる、その感触を楽しみたいからだなんて、ツナにも気付かれている事にはさすがに気付いていなかった。
(えへへ、獄寺君可愛いなぁ)
これは、ツナだけの秘密。