ORIGINAL USUAL DAYS
□誘惑のブランデーケーキ
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拝啓 俺の獄寺君
お元気ですか。
俺は、獄寺君がいないので毎日ブルーです。
でも今日は、バジルと炎真と3人でお買い物に行って、楽しかった。
途中で男にバジルがナンパされてたから、ちゃんと炎真と2人でバジルを助けたんだよ、ほめてほめて!
でもね、やっぱり、獄寺君がいないと寂しいや。
獄寺君にぎゅって抱き締めてもらいたい。何だか、もう懐かしいよ。
次会える時には、もっともっと獄寺君に好きになってもらえるように、俺もいっぱいいっぱい獄寺君の事考えて、自分を磨いとくね。
だからお願い。
俺の元に帰ってきて・・・。
つなよし
「・・・おい、何だこの三流恋愛ドラマに出てきそうな頭の悪い手紙は」
食堂のテーブルの上に、伏せもせず置いてあるそれを手に取り読んで端正な顔をしかめたのは、夏休みだというのに生徒会の仕事で行っていた学校から帰ってきたばかりのリボーン。
「お帰りなさい、リボーン殿。それは、あちらで窓の外を見ながら黄昏てらっしゃる沢田殿が先ほどお書きになったものです」
「ツナが書いたものだとは分かってんだ。おいツナ、何だこれ」
「リボーンには分からないよ、俺の気持ちなんて」
消え入りそうに元気のない声でそう返して、ツナはまた泣きそうに歪んだ瞳を窓の外に向けた。
「分かりたいとも思わねえな。悲劇のヒロインぶりやがって」
レオン寮の管理人でもある獄寺は、今はこの寮にいない。
3年前からこの寮を任されている獄寺、例年であればほとんどの寮生が実家に帰省し手薄になる寮を、それでも実家が遠い事や部活を理由に残る寮生のために、他のスタッフと話し合い交代で夏休みを取り、滅多に帰らない実家に帰省していたのだが、今年は。
「俺、寮に残る。夏休み中獄寺君に会えないなんて、そんなの嫌。獄寺君不足でどうにかなっちゃうよ」
そんなツナの一言で、獄寺は自身の夏休みも寮で過ごす事にした。
けれど、獄寺がずっと寮にいる事を聞いた、ツナが唯一頭が上がらない理事長―――ツナの祖父に、夏休み終盤に行われる二年生の林間学校に炊事指導者として同行してくれないかと頼まれたのだ。
たったの三泊四日。の、本日二日目。