贈呈したもの

□願いごとはただひとつ
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瞬間、ビュウと2人と1人の間に強い風が吹いて。


「・・・なぁんだ、気付かれてたのか」


山本の姿で、山本の口から出てきたその声は、山本の声ではなかった。


「誰だてめえ!」


獄寺はツナを背中にかばい、「山本の姿をした何か」を睨みつける。


その先で、トン、と軽くジャンプしたその体は、そのまま宙に浮いて。


「僕はただ君達と友達になりたかっただけだよ」


「・・・っ、おい、待ててめえ!」


獄寺の叫びむなしく、それは空気に溶けるようにその姿を消して。


辺りを見渡せば一面の銀世界。どこまできたのか、山荘の明かりはすでに見えない。


「動き回るのは危険だな・・・くそっ、あの野郎」


舌打ちをして、獄寺はどこか寒さを凌げる場所はないかと神経を尖らせて辺りをもう一度見渡す。


自分は凍えようがどうなろうが構わない、だけれどツナだけは守りたくて。


「・・・あ!10代目、あそこに小屋があります。頑張って歩きましょう」


「うん」


ツナの鼻がぐす、と鳴ったのはきっと、寒さのせいだけじゃない。


「足を取られたら大変です、お手をどうぞ」


手を差し伸べてくれて握った獄寺の手は、この寒空の下唯一の温もりだった。




「10代目、お寒くありませんか?」


「うん、平気。君と瓜こそ大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


それに同意するかのように、瓜はツナに頭をすり寄せる。


すきま風が入る小さな小さなぼろ小屋の中。


獄寺と豹化した瓜に守られて、ツナは獄寺の胸に背中と頭を預けた。


「ごめんね、俺もリング持って来てれば助けも呼びに行けたしもう少し温かかくも出来たのに・・・」


「そんな、10代目は何も悪くありません」


ぎゅっと抱き締めてきた獄寺を、ツナも抱き締めた。


寒さが増せばお互い熱を分け合うかのようにキスをして、隙間なく抱き合いまたキスをして。


どのくらいそうしていただろうか。


徐々に体温は奪われていき、炎エネルギーが切れ瓜も猫に戻り。


薄れそうになる意識の中、ツナの最後の記憶は。


「ツナ!獄寺!」


「2人とも無事かっ!?」


オレンジと青の、暖かくて優しい炎の色と。


『・・・ごめんなさい・・・』


誰の物か分からない、消え入るような謝りの言葉だった。


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