贈呈したもの
□願いごとはただひとつ
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「あっはっはー、獄寺って本当にツナ好きなのなー」
「まったくだぜ。目の前でイチャ付いてくれるなよ」
皆との会話に笑いながら、ツナは自分の感覚に戸惑っていた。
どう説明していいか分からない。
さっき部屋に戻ってきた山本が、まるで知らない人に見えたかもしれない、なんてそんなあやふやな事。
でも今見ると普通に知ってるいつもの山本で。
「んじゃお風呂行こうか。場所どこ?」
「それが、秘湯で売っててパンフにも載せてないらしくて。外なので、コート羽織っていきましょう」
「そうなの?でも、探検みたいで面白いよね。あ、じゃあリング外してった方がいいかな、なくすと大変だし。すいませんディーノさん、預かってもらってていいですか」
「おう」
「てめ、なくすなよ!」
「馬鹿言え、これなくしたらリボーンに八つ裂きにされちまう」
「リボーンさんの手を煩わせるまでもねえ、俺が八つ裂きにしてやる」
「はいはいそこまで!じゃディーノさん、行って来ます」
「おー、いってこーい」
大空のリングを預け、留守を頼んでツナ達は露天に向かう。
「どんなとこだろうね」
「楽しみっすね」
気付かなかった。
後ろを歩く山本のその口元が、怪しく歪んだ事に。
「あっれー?・・・っかしーなー、こっちだって聞いたんだけどなー」
「おい野球馬鹿!」
サクサクサク、雪の中を歩きながら場所は粗方見当が付いているという山本に着いていくが、それらしい場所はいっこうに見えてこない。
「多分こっちだ」
「それ何回目だよ!・・・10代目?どうなさいました」
何度目かの方向転換に獄寺がそろそろキレそうになった頃、ツナが獄寺の腕を引いてふと立ち止まった。
「お疲れになったのですか?すみません、最初から俺が探していればこんな事には・・・おらどけ、ナビ交代だ」
「そうじゃなくて」
ポツリ、呟いたツナに獄寺と山本の視線が向く。
「ごめん獄寺君。もう少し早く聞くべきだった」
「10代目?」
獄寺は意味が分からなさげに首を傾げるが、ツナの視線の先の山本はそれまでの笑顔を表情から消した。
「君、山本じゃないよね。誰?」
聞いてから、ううん、と自分で否定して。
「君は、「何」?」