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□奇跡の幸せ
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「あら、そう?獄寺君の事だから、帰りも送ってきてくれるでしょう?お夕飯、食べていってね」
「はい、いただきます」
素直な獄寺の返事に気をよくしたのか、奈々は笑顔で「行ってらっしゃい、車には気をつけるのよ」と、声をかけてくれた。
「10代目、どちらに行かれますか?」
「んっとね、つっくん、いろんなとこをごくでらくんとおさんぽしたいの。おっきいつっくんなら、いくらあるいてもつかれないでしょう?ちっちゃいつっくんはね、すぐにつかれちゃうんだよ」
「「あなた」はまだ4歳であられますから、しょうがないですよ」
「むー。しょうがなくないの。つっくん、ごくでらくんとでーとしたいの」
「それは光栄です。・・・それでは、行きましょうか?」
笑顔で手を差し出すと、ツナもぱあっと笑顔になって躊躇なく獄寺の手を握ってくる。
過保護な獄寺により寒さ対策でツナはグローブを普通の手袋として手に着けていて、感触はツナそのものではなかったけれど、きゅっと込められる力は確かにツナの手で、獄寺はまた笑みをこぼした。
獄寺は願っていた。
どうか誰にも会わず、このまま2人きりの幸せな時間を過ごしたいと。
けれど、そう願えば願うほど、その願いは簡単に打ち崩されて。
「おー、ツナと獄寺じゃん。珍しいのな、外で手を繋いでるなんて」
現れたのは、いつもの笑顔全開な山本。
「・・・ちっ」
獄寺はあからさまに大きな舌打ちをした。
「んだよ野球馬鹿、こんなとこで何してんだ」
「何って、見て分かるだろ。家の手伝いだよ。よっ、ツナ」
「う・・・」
当然4歳のツナはまだ山本を知らない。
いきなり「知らないおっきなお兄ちゃん」に名前を呼ばれて、本来の臆病な性格がでたのかツナはびくりと肩を揺らし獄寺の後ろに隠れてちょこんと顔だけ覗かせる。
自分より大きな獄寺よりさらに大きい山本に、威圧感を感じてしまったらしい。
「んん?どうした、ツナ」
「あー・・・」
山本は10年バズーカを知っている。獄寺から事情を説明すると、山本はツナと視線を合わせるように屈み(いつもならこれをすると身長差を思い知らされるためツナは嫌がる)、にっこりと笑った。
「俺な、山本ってんだ。お前の親友」
ツナは無言で獄寺を見上げる。