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□奇跡の幸せ
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いったん躊躇した後そっとツナの頬に手をやると、ツナはとても嬉しそうにきゃっきゃとはしゃいで、側に置いていた鉛筆を握り締めた。
「あのね、りぼーんがおべんきょうしろっていうの。でもまだつっくんあいうえおかけないの。ごくでらくんおしえて?」
(「つっくん」!?10代目、あなたはご自分の事をそう呼んでいらしたのですか!か、可愛い!やはりあなたは昔から最強無敵にお可愛らしかったのですね!)
「相変わらずうぜぇ奴だな」
ツナのあまりに無邪気な可愛さ(獄寺視点)に身悶えていると、獄寺の思考が手に取るように分かったリボーンが、心底うんざりしたように獄寺を一瞥した。
「・・・そうです、そこから曲げて・・・はい、お上手ですよ10代目、それがさわだつなよしさんの「よ」です」
「つっくんの「よ」!あのねあのね、つっくん、「し」はかけるよ!」
得意げに話して、ツナは「し」を「よ」の横に書き、えへんと胸を張る。
「お上手です10代目。さすがですね」
撫で撫でと頭を撫でると、ツナは嬉しそうに笑って獄寺にぽふんと抱きついた。
ビジュアル的には、14歳の獄寺が14歳のツナにひらがなを教えて、書くたびにツナを誉め讃えるその姿は若干異様ではあるけれど、獄寺はそれを意に介する様子は全く見られない。
「次はどの文字を覚えますか?何でもお教えしますよ」
「なんでも?じゃあね、あのね、つぎはごくでらくんのおなまえかきたい」
「俺のですか?光栄です」
「ごくでらくん、いっしょにかいて」
ね?とおねだりするように首を傾げて、ツナはちょこんと獄寺の膝に座る。
「ごくでらくんの、ごー」
早く早くとせかすツナは獄寺には刺激的すぎて、獄寺は「こちらは4歳の10代目、4歳の10代目・・・」と自分に言い聞かせるかのように心の中で繰り返し続けた。
獄寺の名前をひらがなで書けるようになると、ツナは勉強に飽きてしまい。
「ごくでらくんとおさんぽいきたい」
と、ぐずりだした。
あのリボーンが、いつも軽くかわしてはいるが隙あらば命を狙おうと付け狙うランボとは違い何も知らない無垢なツナには勝てないらしく、簡単に勉強中止を許可した。あのリボーンが。
「ところでリボーンさん、なぜ10代目がお持ちになっていたのは鉛筆だったのですか?」