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□奇跡の幸せ
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獄寺としては速攻否定したいところだが悔しい事にそれは事実であるし、4歳ツナに余計な不安を植え付けるわけにもいかないので、コクンとうなづく。
「大丈夫ですよ10代目、そいつの言ってる事は真実です」
「・・・やまもとくん?」
「はは、何かくすぐってえのな」
おずおずと名前を呼ぶと山本は笑顔でツナの頭を撫で、出前の途中だからと手を振って去っていった。
「つっくん、ごくでらくんのほかにおともだちいるの?うれしい、ちっちゃいつっくんには、おともだちいないから」
えへへ、と笑うツナは本当に嬉しそうで、獄寺も笑顔になりツナの手を握り直す。
「ねえねえごくでらくん、ごくでらくんはすきなひといる?」
「好きな人ですか?・・・ええ、いますよ」
「そうなの?あのね、つっくんにもいるんだよ、すきなひと」
「は・・・」
はい、と反射的に返事しようとして、ツナの言葉を頭の中で反復した獄寺はぴしっと固まった。
「・・・そ、それは・・・同じ幼稚園に、通ってる奴、ですか・・・?」
小さい時すでに好きな人がいたなんて聞いた事がない。
知り合った頃にツナが想いを寄せていた京子とは中学校かららしいから、京子の事ではないはず。
「ぶー、はずれ。あのねー・・・」
両手で口元を押さえて笑い、獄寺に耳打ちしようと爪先立ちになる。
それに合わせて獄寺が少し身を屈めたところで、ボフン、と知った感覚が襲った。
「ん?」
爪先立ちの状態で目をぱちぱちさせてるのは。
「あれ?何で俺ら外にいるの?」
14歳の、ツナで。
「獄寺君、聞いてい」
「・・・じゅうらいめええええ!!!」
聞いていいかな、と。ツナが状況を聞こうと獄寺の顔を覗き込もうとすると、それより先に獄寺が涙目でツナの肩を掴んだ。
「ご幼少の頃に好きだった奴って誰っすかあああ!」
「は?」
「こたえてくらさいじゅうらいめえええ!」
整った端正な顔をここまで歪められるのかと、逆にツナを冷静にさせるまでに歪めて、獄寺は人目もはばからず泣きわめいて。
「うん、とりあえず落ち着こうか獄寺君」
「自分」がいない間どんな会話をしていたのかを知るのが先決だと、ツナはひきつった笑みを浮かべながら腕を伸ばして獄寺の頭を撫でた。