贈呈したもの

□表情―espressione―
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プリーモに、Gさんと二人きりでデート行ってきてくださいと提案をした。


それは、ほんのちょっとの好奇心から。


「何?俺とGがか?」


「はい、たまにはいいでしょう?俺達とじゃなくて二人っきりって言うのも」


プリーモとGさんをデートさせたら、やっぱりお互いにしか見せない表情とかもあるのかなって。




「さすが10代目、それは名案です」


「あはは」


獄寺君に話したら、返ってきた言葉は思っていた通りのもので。


「通りで、今日は朝からGの意識がリングになかったんすね」


「え?Gさん、獄寺君に何も言わないで出てったの?」


「10代目と初代様方とは違って、俺らは基本お互いに放任なんで気にしません」


「そ、そうなんだ。・・・あ、いた」


街中を獄寺君とてくてく歩きながら、不覚にも俺が起きる前に出掛けてしまっていたプリーモとGさんを通りの向こうに見つける。


「少し走りましょうか、この距離だとまた見失ってしまいます。お手をどうぞ」


自然に差し出された手。


それに反応が少し遅れると、獄寺君がはっとして手を引っ込めようとした。


「・・・っあ、すいません、つい。恥ずかしいですよね、こんな街中・・・10代目?」


とっさに引き留めた手のひら。


同年なのに俺より一回り以上大きいその手からは、引き留められた事に対する戸惑いが感じられて少し笑った。


「行こ?本当に見失っちゃう」


そのまま手を繋いで笑いかけると、獄寺君も俺の手を包んで「はい」と俺にしか見せない顔で笑った。




プリーモとGさんの後を追いかけると、2人が入ったのは意外にも本屋。


「10代目、こちらへ」


着いてきてるのに気付かれないようにこっそりと後を付けながら、2人の様子を伺う。


獄寺君が誘導してくれたのはスポーツ雑誌のコーナーで、そこには俺達より先に物静かそうな男の人がいたけれど、獄寺君は完全に無視しているみたい。


俺以外を視界に入れようとしないのはいつもの事なので、俺達が来た事に気付いてこっちを見たその人に俺がぺこりと頭を下げたら、その人もぺこりと頭を下げてくれた。

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