贈呈したもの

□表情―espressione―
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「10代目、あちらを」


「え、あ、ごめん」


彼に気を取られながらも獄寺君が指さす方を見ると、プリーモはすでに両手に小説らしい本を持っていて。


「どっちか買うのか」


「デーチモはどっちがいいだろうか。一緒に読もうと思うのだが」


「その前にお前が日本語読めるのか」


「お前は馬鹿か。読めるから話せてもいるのだ。お前こそちゃんと読めるのか」


「それこそばーか。先に日本語マスターしたの俺だろうが」


「ぐっ・・・しかし漢字を先に書けるようになったのは俺の方が先だ」


「書く文字は破壊的だけどな。文字というよりむしろ見事に前衛的な絵になってたしな」


「・・・!でもお前は手紙を書けばちゃんと返事をくれたではないか。ひらがなばかりで」


「知らなかったのか。お前手紙書く時全部口に出しながら書くから、雨月がそれ聞いてこっそり正しい文字で書いたもんを送ってくれてたんだよ」


「何?じゃあ「日本語上達したな」という返事は」


「社交辞令に決まってるだろ」


「なっ!・・・しかし今はもう日本語も書き方も完璧だ。手紙を書いてやろうか、あの頃のように」


「いらん」


「何だと罰当たり者が」


赤色の髪に右頬から胸元にかけての赤いタトゥーに赤い瞳のGさんと、金色の髪にオレンジ色の瞳に黒いスーツのプリーモ。


ただでさえ目立つ容姿にチラチラと2人を気にしていた周りのお客さんが、そんな会話を聞いてクスクスと微笑ましげに笑っている。


俺達自身2人のそんな完全プライベートな会話を聞くのは初めてだから、何だか新鮮な気分だ。


「当たり前だけどやっぱり平和に暮らしてた時期もあったんだね」


「ですね。・・・話を聞く限りでは、初代様が引退され日本に来た後の話みたいですが」


あ、何かやばいかも。


「ああやって普通に話してるんだからきっと、楽しい日々だったんだよ」


「はい」


「ほら、君がそんな顔しないの」


やっぱり。何故か獄寺君が泣きそうな顔してる。意外とセンチメンタルなんだから。


「10代目・・・」


プリーモ達を背にぎゅっと抱き締められて。


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