贈呈したもの
□いくつ季節が過ぎても
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こんなところも変わった。
前なら、ツナが触れただけで面白いくらいに動揺し、真っ赤になって照れていたのに。
(相変わらず綺麗だなぁ・・・)
鼻先同士が触れるほどに顔が近づくのももう数え切れないほどなのに、何度見てもそのたびに綺麗だとツナは思う。
獄寺はよくツナを「あなたは変わらずお可愛らしくてシブくてかっこいいです」と言って屈託なく笑う。
それは獄寺視点での欲目だろうと思うけれど、もしかしたら自分がこう思うのも欲目なのかもしれないとツナは考えたりする。
カタンと椅子を鳴らして席を立ち、獄寺の髪に触れたまま背後に回った。
「10代目?」
それに気付いて顔を上げた獄寺の手元を覗き込めば、後は日誌を書いた自分の名前を書くだけで終わるまでになっていた。
「あ、もう書き終わるんだね」
「はい」
きゅ、と後ろから腕を回して抱きつけば獄寺は嬉しそうに笑ってツナの腕に触れ、サラサラと自分の名前を手早く書いてボールペンを置くと、さらにツナの背後に腕を回して頭を引き寄せ、キスをした。
「ん、」
もっと、と態度で示せば仰せのままに、と言葉で返してもう一度キス。
唇が離れると、ツナは獄寺が座ったままのため珍しく自分の下に見える髪にキスをして、そのまままた腕を回して後ろから抱きつき肩口に顔を埋める。
「獄寺君さ、もうすぐ誕生日だよね」
「ああ・・・そう言えばそうですね」
「何か欲しいものとか、俺にして欲しい事とかある?」
「プレゼント、くださるのですか?」
「うん。絶対悩むから、どうせなら素直に聞いてみようかと思って」
「ありがとうございます。そうですね、10代目がくださるものなら何でも嬉しいのですが」
考える素振りは見せるけれど、もう答えは出ているだろう。ツナは分かっている、獄寺がどんな言葉を返すのか。
「「10代目がこうしてお側にいてくだされば、それが一番のプレゼントです」・・・やっぱりか」
全く同じ言葉を一言一句間違いなく言われ、獄寺は目を丸くしてツナは予想通りのそれにため息をついた。