贈呈したもの
□本日も見目麗しく。
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「行く」
「駄目だ」
「どうしても行く」
「どうしても駄目だ」
「なぜ駄目なのだ」
「駄目だからだ」
「理由になってないぞ!」
「あの・・・何やってるんですか?」
夏休みに入り、俺の家にお泊まりに来られる10代目をお迎えに行きがてら買い物を済ませ戻ってくると、最近は特にリングの外に出ることが多くなったGの野郎と初代様が、何やら言い合いをしていた。
「おお、戻ったかデーチモに獄寺君。お前達もGの説得に協力してくれないか」
10代目のお言葉に俺達の存在に気付かれた初代様が、渡りに船だと言わんばかりに目を輝かせる。
「協力ですか?俺達で出来る事ならしますけど・・・一体何を?」
「俺は海に行きたいのだ!リングの中から眺めるのではなく、体で潮風などを受けてみたいのだ」
「受けたところで何も変わらないだろうが。俺達は生身じゃないんだから、暑さも寒さも冷たさも感じねえし」
「それは実体化すれば解消される問題だろう。俺は、ひやけどめなるものなどを体に塗って、暑い中裸で走り回ってみたいのだ」
裸で、のところで、Gが分かりやすく顔をしかめた。
(・・・ああなるほど、そういう事か)
分かった。何で初代様が海に行くのを渋るのか。
「デーチモに獄寺君、どうすればGは海に行くのを許可してくれると思う?」
「許可も何も・・・別にGさんの許可得なくても、俺お付き合いしますよ?」
「もちろんデーチモも、獄寺君も人数にはすでに入っているのだ。「ダブルデート」なるものがしてみたいのだが」
初代様の仰る事に、基本的に10代目も俺も首を横に振る事はあまりない。
それをご存知だからこそ初代様は俺達に助けを求められたんだろうし、Gも初代様と10代目からのダブルでのお願いには弱いから、すでに不機嫌さを隠す事なく諦めたように壁に背を預けている。
「ね、獄寺君。海行こうよ。俺も行きたい」
すでに10代目も乗り気・・・あああ、なんてお可愛らしく純粋で清らかな瞳で見上げられるのですか!
(ぐっ・・・だが耐えろ俺。ここで流れに任せて首を縦に振るわけにはいかないんだ)
今はGの気持ちに同調出来るから分かる。
男には、けして譲れないものというのがあるんです10代目っ。
「申し訳ありません、10代目、初代様。そのお願いは、ご遠慮させていただきたいのですが」