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□【2】追憶
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言ってしまって、はっとした。


(そうだった、先生の事は内緒だったんだ!)


「先生?」


山本が不思議そうに聞き返す。


「えーと・・・カ、カウンセラーみたいな?でもカウンセラーっていっても、前にちょっと知り合いだった人なんだ。最近偶然会って、話聞いてもらってるの。すごい人見知りな人だから紹介とかは出来ないけど、えっと、」


「あーなるほど。最近のご機嫌の理由はその人か」


「う、うん」


正直、獄寺と話してるとすごく心が晴れるのだ。


獄寺が帰った後はちょっと寂しくなって、「先生明日も来てくれるかな」ってつい口に出た呟きを聞いてた家光に、「お?惚れたか?」とからかわれたりして。


(バカじゃないの父さん、先生に失礼じゃんそんなの)


「でも大丈夫かその人。カウンセリングする側が人見知りって」


「え、あ、俺にとっては、って意味で、本当は別の仕事してるんだ。あの、だから山本、この話京子ちゃんには内緒にしててね。気にしちゃうだろうから。そんな大した感じじゃないから」


「おう、分かったのな」


山本はようやくいつものように笑ってツナの頭を撫でる。


「いやでもよかったよ、行人に見付かる前にその人と会えて」


「ユキビト?気に入った人間を自分の仲間にするっていうの?あれ都市 伝説でしょ?」


「かもしんねえけどさ、いるかもじゃん?」


「えー、いないよ。もしいても、仲間にするとかは嘘だね。だって仲間にするって事は、連れてくって事でしょ?誰かがいなくなったりしたら大騒ぎになるよ、普通」


「記憶操作出来るとかも言うしさ、そいつの記憶消されてたりして」


「そこまで来たらもうファンタジーの世界の話だよね、それ」


「ツナってほんと現実主義者なのな」


「あはは。いるなら会ってみたいとかちょっと思うけどね」


「もし俺が行人だったらどうする?」


「山本が?ないない、俺だませるほど山本器用じゃないよ」


「それは喜ぶべきなのか、中々複雑なのな。・・・って、ヤバいツナ、走るぞ!」


鳴った予鈴に慌ててツナの手を引いて走り出した。


(先生の事は、一応嘘はついてない。うん)


思えば、カウンセリングのように獄寺に話を聞いてもらっていると言えばその通りだし。


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