贈呈したもの
□sweet eve
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「悪ィけど、従えません!!」
まだ殆どのクラスメイトが残っている放課後の教室に、獄寺の声が響いた。
ツナと向き合っているシチュエーションに、ツナに逆らった事だけは理解してその珍しさにざわめきが止む。
そんな中ツナは、どこかで聞いたセリフだと、せっぱ詰まった顔で自分を見ている獄寺を見ながら思った。
そうだ、あれは確か未来での白蘭との最終決戦の夜。
怪我を押して戦いに出ようとする獄寺に「許可出来ない」と言った時に、獄寺がツナを「10代目」と呼ぶようになって初めて逆らった時のセリフだ。
(あれ・・・でも待って。今そんな深刻なシーンじゃなかったはず)
今日は一緒に帰れないと、獄寺に言った。
理由を聞かれて、「京子ちゃんの家に行くから」と答えた。
すると当然のように「俺もご一緒します」と言うから、「今日は先に帰ってて」と言ったら、返ってきたのがあの言葉だった。
「・・・獄寺君。とりあえず、落ち着こうか」
「無理です。俺は10代目の右腕として、常に10代目のお側にいる必要があります!」
ツナに詰め寄るように力説する獄寺に、ツナはどうしたものかと考えを巡らせる。
京子の家に行く理由そのものを、獄寺には言うわけにはいかないのだ。
(バレンタインに渡す手作りチョコ作るために、なんて、)
それはもちろん獄寺に渡すものなのだけれど、だからこそ獄寺には当日の明日まで隠しておきたい。
「京子ちゃん家だよ?何の危険もある訳ないでしょ」
「危険はあります!まさかお泊まりになるわけでもないでしょうし、帰り道にあなたを狙う男共に襲われたりしたらどうなさるんです!」
「襲われないよ。考えすぎだって。君くらいだよ、俺みたいなの襲う人」
「あなたはご自分の魅力というものをまるでご存じない。あなたを狙う不届き者は結構いるんですよ、あちこちに!特に骸とか!」
「骸は君をからかいたいだけだって」
「そんな事仰って油断なさってると、いつか本当に体を奪われてしまいますよ」
「あれもう口癖みたいなもんだから、気にしなくていいと思うんだけど」
「お願いですから、ご一緒させてください!」
「い、や、だ」
べーっ、とツナは舌を出して再び却下する。