5927(短)
□からかうのも程々に
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「―――げほげほげほっ!」
獄寺は、咳こむ自分の声で目を覚ました。
起きたばかりの頭でどうやら風邪を引いたらしいなと冷静に分析して、手を伸ばして携帯を取り時間を確認すると、午前6時10分。
「・・・とりあえず起きるか・・・げ、ひでえ声・・・」
とても自分の声とは思えないそれに、起き上がりかけた体を再びベッドに沈め、今日は休むかと一瞬頭をよぎる。
しかしそうすると、毎日の日課であるツナの迎えに行く事が出来ない。
更に学校に行けばいつも自分がいる場所、ツナの隣を山本に奪われてしまう。
「・・・ざけんな、あの野球馬鹿め」
あまりにも違う声に辟易しながらも、飯食って薬飲んで行くかとベッドから這い出した。
「おはようございます、10代目」
「・・・おはよう獄寺君、すごい声だね。風邪引いたの?」
いつものように迎えに来てくれた獄寺の声と、大きなマスクをしながらもいつもの笑顔を見せる獄寺の様子に、ツナも驚く。
「そうみたいです・・・見苦しいところをお見せしてしまって申し訳ありま・・・っ、げほげほっ、・・・ありま、せん・・・けほっ」
「ああほら、咳止まんないじゃん。何で来たの、休めばよかったのに」
体を折って咳こむ獄寺の体を、慌ててツナは支える。
「けほっ・・・10代目のお側を、離れるわけにはいきませんから」
「病気の時までそんな事気にしないでよ、全くもう!いいよじゃあ、俺の部屋で寝てて。母さんに学校に連絡入れてもらうから」
「10代目」
閉めた玄関の扉を再び開けようとしたツナの腕を捕まえて、獄寺は眉を曲げてツナを見た。
「・・・ご迷惑、ですか・・・?」
(・・・っ!)
まるで子犬のような頼りなげな瞳。
こんな時の獄寺に、ツナは弱い。・・・けど。
「・・・っ、だからっ・・・それとこれとは話が別だってっ」
「本当に、大丈夫なんです。ひどいのは声と咳くらいで、頭痛も吐き気も体のだるさもあ、・・・げほっ、・・・ありませんから」
あくまでもついて行くと言って引かない獄寺をツナはしばらく見上げ。
「・・・分かったよ」
じゃあ行こうと、珍しくツナから手を繋いで歩き出した。