転生シリーズ
□始まり
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ビルの屋上に1人佇む少女がいた。
その少女はフェンスの外で、今にも飛び降りそうな、深刻な顔をしている。
『ハハッ、馬鹿みたいだ。こんな世界、何も楽しくない』
自嘲気味に笑った少女は風が弄んでいる髪をかきあげた。
髪をかきあげた右手首には自傷行為の跡が痛々しく、多数ある。
少女は一歩、また一歩とフェンスから離れていく。
そして─────………
『……さようなら、つまらない世界』
そう呟いて少女は落ちた。
重力にしたがい落ちて行くが、それをあるモノが止めた。
周りの人々の動きが止まる。
少女はその違和感に気づき、目を開いた。
少女の目の前には黒衣をまとっている人間の形をした何か。
『……アレ?あたし死にたいんだけど』
少女は目の前で起こっている非現実的な事に動じる様子もなく、冷静に言った。
「お前はその命、いらないのか?」
かみ合っているような、そうでもないような会話。
少女は初めて目の前の黒衣のモノを見て、目を細めた。
『……いらないね』
ため息をつきながら心底つまらなそうに答える。
黒衣のモノは少し考える素振りをして笑った。
「ならその命、俺にくれないか?」
『何故?』
目を細めたまま少女は冷たい視線を送り、少し上を見上げる。
少女が見上げた空は皮肉にも雲1つない快晴だ。
「つまらないんだろ?俺が楽しい世界に連れて行ってやるよ」
黒衣のモノの言葉を少女は鼻で笑った。
黒衣のモノは眉間にシワを寄せる。
『馬鹿みたい。そんなの出来るワケないじゃん』
「なんだと?……俺を誰だと思っている」
『……変人』
"変人"と答えた少女に黒衣のモノは顔をひきつらせる。
顔をひきつらせたまま黒衣を脱いだ。
黒衣の下にあったのは黒い翼。
『……悪魔?』
「天使だ!天使っ!……はぁ、まあいい。契約者になってもらうぞ」
『嫌だね。自分の人生は自分で決める』
即答した少女にとうとう天使がキレ、勢いよく少女に飛びかかろうとした。