貰い物
□MANDARIN KISS
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「まーさーはーるー」
「はもはも…」
「まーさーはーるー!」
「はもはも…」
「もう!!雅治、返事くらいしてよ!」
「はもはも…なんじゃ?…はもはも…」
「…ハア」
今私は家で、恋人の仁王雅治と、コタツに蜜柑、というスタイルでくつろいでいる。そしてイチャイチャラブラブする…
はずだったんだけど
さっきからコイツは蜜柑ばっかり食べてて全然かまってくれない! 今日は31日…時刻は23時43分。もう少しで年明けである。 30分ぐらい前まで、私の作った年越しそばを食べてゆったりしていたのだが、デザート(?)に蜜柑を出したのが間違いだった。はもはもはもはも…ずっと食べ続けてる。 2人とも親が「商店街の福引きで、年末旅行がペアで当たったから〜」って出掛けたから、雅治と一緒に年越しを過ごせると思ってたのに…。
「…いいもん」
「…ゴクン…は?」
「雅治は蜜柑が恋人なんだよね。いいもんいいもん…かまってくれなくてもいいもん!フン!!」
私は子供みたいにそう言うと、ベッドに潜り込んだ。遠くで除夜の鐘が鳴っている。
(雅治は恋人と年越しを過ごすのを何とも思ってないんだ…。私は楽しみにしてたのに…あ、ヤバい。自分で言っといて、何か泣けてきた…)
「…グスン…」
「時雨」
「……グズグズ」
「しーぐーれー」
「……」
さっきの仕返し。無視してやる。
「……」
「……」
「……」
「……」
ガバッ
「ふえっ!?」
無視していると、突然雅治が抱きついてきた。
「え、ちょっ、雅治!?急にどうしたの!?」
「…た」
「え?」
「かまってやらんですまんかった!!」
「へ?」
雅治に突然抱きつかれ、さらに突然謝られ、私は思考が追いつかなかった。 (てか、恋人に突然抱きつかれてびっくりしない人は慣れてる人だね。私は慣れてない人なんだよ!) 雅治は必死に話し出す。
「俺は時雨と一緒におりゅだけで良かったんじゃ!じゃ、じゃが、ちょっと意地悪したなったもんじゃから無視したり、蜜柑ばっかり食ったりしてみたんじゃ!でも時雨に無視しゃれんのは耐えれんかった!ホントにすまんかった!すまんかった!じゃから、嫌いににゃらんとって!頼む!」
慌てているのか、所々かんでいる。可愛い…。
今、雅治は自然と上目使いになっていて…それでこんな可愛いこと言われたら…
「……」
「…時雨?」
私が黙っていたので不安になったのか、雅治が顔を覗き込んでくる
きゅん←
ギュッ
「ふにゃ!?」
「雅治可愛いっ!!もう怒ってない!怒ってないよ!」
私は雅治をギューッと抱きしめ返した。何この可愛い子!ペテン師何処へ行ったんだ!?
「男に可愛いってどうなんじゃ…」
雅治はブツブツ言ってたけど、顔は何となく嬉しそうで。
「…雅治」
「何じゃ?」
「念の為に言っておくけどさ、私はどんなに喧嘩しても雅治を嫌いになるなんてこと、絶対にないからね」
そう言うと雅治は、花が咲いたようにパアアアっと笑った。
「それは俺も同じぜよ!」
カチ…
「あ」
「ん?」
「年…越しちゃった。」
時計の針が00時00分を指した。除夜の鐘が聞こえなくなってゆく。
「マジか!?早いのぉ…」
「ふふ…あけましておめでとう、雅治。今年もよろしくね」
「あけましておめでとう。こちらこそよろしくナリ、時雨。」
顔を見合わせて笑いあう。そしてどちらからともなくキスをした。
「雅治、大好きだよ」
「俺も時雨が大好きじゃよ。」
《MANDARIN KISS》
今年初めてのキスは
甘酸っぱい蜜柑味
雅治の可愛い一面も見れたし
何だかんだで楽しい年越し
結局朝方まで遊んでました
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