恋に落ちた海賊王:ハヤテ
□『大空への誓い』 ハヤテ短編
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いつもように甲板で剣の鍛錬をしていたハヤテ。
そこへ・・・。
「最近、珍しく毎日鍛えてるじゃないか。」
シンがハヤテに近寄って、にやっと笑いながら言ってきた。
「あぁ?」
剣を振るうのをやめ、シンを見るハヤテ。
「まぁ・・・女がいるんだから、今までどおりじゃな。ククク・・・単純なやつだな。」
「うるせぇ!女がいるからってだけじゃ・・・ねぇよ。」
「ほぅ?そうは見えないが?どうせ○○に何か言われたからだろうが。」
「ちげぇよ!オレだって・・・自分1人で考えることもある。」
「ふ〜ん・・・やっと少しは成長してきたか?」
「当然だ。オレは男だからな。」
シンを睨みながら軽く宣言するかのように言葉を吐くハヤテ。
「進化しないものは退化する。いい心がけだ。」
そう言って、シンは航海室へと入っていった。
「イチイチうるせぇな・・・シンのやつ。毎回毎回・・・。」
そしてハヤテは、また・・・剣の鍛錬を始めた。
しばらくすると
洗濯物を沢山抱えた○○が、少し離れた場所を通っていった。
ハヤテは剣をしずめ、その姿を目で追う・・・。
楽しそうに仕事をする○○。
いつもと変わらぬ笑顔が、そこにある・・・。
○○のそんな様子を見ながら、また剣を振るいだすハヤテ。
緩い突風が、甲板を突き抜けていく。
と?
「きゃあっ!!!」
どうやら洗濯物の1つが、風にさらわれそうになっている。
洗濯物は風に舞い、甲板の端にひっかかった。
それを手に取ろうとした○○の隣には、既にハヤテがいた・・・。
「あ、ハヤテ・・・。」
「オレが取ってやるよ。」
洗濯物を取って、○○へ渡す。
「ありがとう!」
満面の笑みの○○。
そんな顔を見て、ハヤテは優しく微笑んだ。
「???ハヤテ???」
いつもは大きな声で話しかけてくるハヤテが、静かに笑うのが珍しいのか
○○は不思議な顔をした。
「な、なんだよ・・・。」
まじまじと○○に見つめられて、少し照れるハヤテ。
「あ、ハヤテ・・・シャツのボタン取れそうだよ・・・。」
「あ、ほんとだ。」
「脱いで?つけてあげるよ。」
「・・・後から頼む。」
「そう?」
ハヤテは、元いた場所に戻って、また剣を振るいだす。
少しして、ハヤテは床に剣を置き
立ちすくしたまま、晴れ渡っている空を見上げた。
心地よい風が頭上を通り
またどこかへ流れていく。
風は目に見えないけれど
その吹いてるだろう先を見つめるハヤテ・・・。
(オレは・・・あいつを守りたい。何が何でも・・・)
そして視線を○○へと向ける。
デッキブラシで、甲板を掃除している○○。
(心に空いた穴を・・・あいつが埋めてくれたんだ・・・)
静かに見つめているハヤテ。
(今までのオレなら・・・何も考えなしに動くだけだった。あいつが・・・あいつがオレを変えた・・・)
「ハヤテ!もうすぐお昼ご飯だよ!」
少し遠くにいた○○が、小走りでハヤテに駆け寄ってきた。
「おぉ?もうそんな時間なのか?」
「今日のお昼はね、少し豪華なんだよ〜!昨日仕込み手伝い頑張ったんだ〜!」
「そうか・・・。」
「ハヤテ?・・・お腹減ってないの?」
「あ?」
「いつもなら”まじかよ!!!”って言うのに・・・。」
「減ってるぜ?」
そういって、ハヤテは○○の頭をくしゃくしゃした。
その珍しすぎる行動に○○は、言葉を失う。
「なに黙ってんだよ?」
「え?・・・いやその・・・め、珍しいなって・・・。」
いきなりのハヤテの行動に、少しドキドキする○○。
「なっ!・・・そ、そうしたくなったから、しただけだよ・・・。」
と・・・ハヤテも少し照れてしまう。
「なんだか・・・今日のハヤテ・・・少し静かだよね?」
「ばっ!お、オレだって・・・そういう日くらいはある。」
「具合悪いの?」
と・・・本当に心配そうにハヤテの顔を覗き込む○○。
「ちげぇよ・・・。」
(まったくこいつは・・・)
と、ハヤテは不意打ちに○○の頬にキスをする。
「!!!・・・ちょ・・・ハヤテ・・・ここ甲板だし・・・。」
「甲板だからなんだよ?」
「いや・・・みんないると・・・。」
「いたらなんだよ。」
「えっと・・・照れるというか・・・。」
突然のキスにドキドキして、顔を真っ赤にする○○。
「自分の女にキスして、なんか変なのか?」
「いや・・・ハヤテらしくない・・・っていうか・・・。」
「オレだって・・・成長はする。いつまでも前のままじゃないんだぜ?」
と、照れながら、苦笑いをしたハヤテに
「なんか・・・少し大人っぽいよ・・・今日・・・。」
○○がそういうと・・・
「・・・オレは、オマエを守るために、強くなりたいだけだよ。」
「え?」
「オレの中には譲れない3つがある。」
「譲れない3つ?」
「あぁ・・・。」
ハヤテは空を見上げ
「この大空と、海と・・・おまえの香り・・・。この3つだけは、いつも傍に置いておくんだ。」
「香り?」
「おまえの香りはおまえだけのもんだろ?だからオマエをずっと傍に置いておく。」
「香りって言われても微妙だな・・・。」
そんな2人を緩い風が凪いで行った・・・。
「あ・・・今、オマエの香りがした・・・。」
「ええ?」
笑いながら言うハヤテを見て、同じく笑う○○。
「傍にいなきゃ、香りはしないからな・・・。」
と・・・また頬にキスをしてくるハヤテに
「もう!ご飯食べに行かなきゃ!ナギさんに怒られちゃうよ・・・。」
顔を真っ赤にしながらいう○○を見て
(オマエはずっと、オレの傍にいろ・・・○○。必ずどんなときも傍にいて、守ってやるからな・・・。オマエのために強くなるからな・・・。絶対・・・)
ハヤテは○○の手をとって、食堂に向かった。
(オレの目には・・・オマエしか映らない・・・○○・・・)
空と海と・・・○○と・・・。