02/01の日記

22:05
ある少年の罪 十分考えて行動を
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子どもたち、私は、先日ある少年院に行ってきました。少年院は、罪を犯した少年が、その罪の軽重に応じて、一定期間強制的に収容され、矯正教育を受ける場所です。そこで、子どもたちに、講演をしてきました。どの子どもたちも、真剣に話を聞いてくれました。私は、一人の少年のことを思い出しました。

 今からもう13年前です。私は、一人の暴走族の少年と親しくなりました。彼は、こころの優しい子でした。町で目の不自由な方と出会うと、飛んでいって道の案内を、朝、ゴミを運ぶのに苦労しているお年寄りを見かければ、走り寄ってその手伝いをする。そんな子でした。

 そんな彼が、自分の乗るバイクが欲しくて、ひったくりをしてしまいました。郵便局から出てきたおばあちゃんのバッグをひったくったのです。そのバッグの中には、おろしたばかりの年金18万円が入っていました。おばあちゃんはご主人と二人暮らし、このお年寄りお二人の2カ月分のすべての生活費でした。おばあちゃんにとっては、命に代えても守らなくてはいけないお金でした。バッグにしがみつき、引きずられ、脳挫傷。4日後に亡くなりました。

 事件の次の日、彼は、私のところに相談に来ました。私は、彼に言いました。「小学生でも、中学生でも、高校生でも、どんな子どもでも、人のものを取ろうが、だれかをいじめようが、傷つけようが、殺そうが、からだを売ろうが、薬物を使おうが、自分のしたことは、必ず、自分で償わなくてはならない。それが人として当たり前のことだよ」。彼は自首しました。そして、3年間少年刑務所に服役しました。

 出所してから今まで10年間、必死に働いています。そして、手にした給料のほとんどを毎月、彼が殺してしまったおばあちゃんのご主人に送り続けています。でも、おじいちゃんからは、1通の手紙も、1本の電話も、会ってもらうことも、おばあちゃんの位牌(いはい)に、お墓に、お線香や花を捧(ささ)げることも許してもらえません。

 彼は、いつも哀(かな)しそうにこう言います。「先生、罪は償えない。いくら俺(おれ)が償っても、おばあちゃんは生き返らない。でも、一生償い続ける。いつかは、神様がもういいよって言ってくれるかもしれない」。私は、彼を抱きしめることしかできません。

 子どもたち、一度してしまったことは、もう取り返しがつきません。お願いです。何か一言をだれかに言うときも、何かをするときも、こころでいっぱい考えてからしてくれませんか。だれかを傷つけないように。だれかを幸せにするように。

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