11/30の日記

22:53
夢を捨てない 逆境、乗り越えよう
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子どもたち、私は、北海道の旭川と札幌を講演で回ってきました。旭川では、もう雪が降りました。私が行ったときには、すでに解けていましたが、北海道は、もう冬です。初めて夜回りコートを羽織り、夜8時に夜の町に出ました。町の中心の三条通を、駅前から、子どもたちに早く帰るように声をかけながら、回りました。そして、先日講演をした、旭川市民文化会館近くの公園に入ると、私より少し年上に見える男の人が、ぽつんとベンチに座っていました。側(そば)には、大きな紙袋と何枚もの段ボールが。私が彼の側に行くと、彼は、震えていました。私は彼の隣に座り、「大丈夫ですか」と声をかけ、そして話をしました。

 彼は、58歳でした。若い頃(ころ)から、北海道のもっと北の町で、道路工事の現場で働いてきたそうです。結婚もし、2人の可愛(かわい)い娘もいました。それなりに幸せな生活をしていました。しかし、5年前に働いていた会社は倒産。何をしてもうまくいかず、自暴自棄、酒びたりの生活の中で、妻と子どもたちは、離れていったそうです。

 借金取りから追われて、この夏旭川に、友人を頼って来ました。しかし、仕事は見つからず、友人に迷惑もかけ続けられず、先月からは路上生活に。何とか冬将軍が来る前に、南に、東京に出て、仕事を探そうと考えていたけれど、旅費もなく、その日その日を何とか生き抜いてきました。私が「何で生活保護の申請をしないのですか」と聞くと、「私は、こんな丈夫なからだを、親からもらっています。働けます。そんな人間が、福祉のお世話になったら、お天道(てんと)様から笑われます」と寂しく答えてくれました。夜11時になると、「これから、食料を探しに行きます」と繁華街の方に歩いていきました。

 私は、ホテルに戻りましたが、どうしても彼のことが頭から離れませんでした。暖かい快適な部屋にいる自分が、何かつらくなって、ホテルで、酒を1升と紙コップを2つ、それにつまみを用意してもらい、またあの公園に戻りました。彼は、段ボールを組み立てて、その中で横になっていました。私は、その中に入り、そして、「ともかく、今は生活保護を受けよう」と説得しながら、2人で朝まで酒盛りをしました。

 朝日が出るころ、彼はそっと言いました。「わかったよ。今日、市役所に行ってみる。そうだよな。働いたら、返せば良いんだ。でも、あんたは変わった人だ。あんたのおかげで、何か忘れていた夢が、もう一度よみがえってきた」。彼の目は輝いていました。私のからだは、冷え切っていましたが、こころは、ぽかぽかでした。子どもたち、夢を捨てること止(や)めよう。どんな時にも。

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