09/07の日記

17:57
各駅停車の旅 ゆっくり確実に進もう
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子どもたち、私は、この夏も日本中を回って、講演を続けています。北海道、宮城、福井、東京、神奈川、静岡、岐阜、三重、大阪、兵庫、岡山、福岡、鹿児島と、1都1道1府10県を回りました。そして、数多くの人と出会い、安くておいしいその土地の食べ物に出合いました。からだは、がたがたですが、幸せな夏でした。子どもたち、君たちは、どんな夏休みをすごしましたか。どんな出会いがありましたか。

 子どもたち、実は、私は、青春時代から、旅を続けていました。私は、大学に入学してまもなく、18歳の時、ヨーロッパに旅に出ました。目的は、ドイツの大学で、哲学を学ぶことでした。しかし、その夢に破れ、かといって、中途半端では、母や仲間たちに恥ずかしくて、帰国するわけにもいかず、放浪生活に入りました。スペイン、ポルトガル、イタリア、フランスの南欧から、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの北欧、ハンガリー、ルーマニア、ポーランドなどの東欧と、ヨーロッパ中を、アルバイトとアメリカ製のジーンズやTシャツを東欧に運び、それを売って生計をたてながら、さまよいました。当時は、このような放浪生活をする若者たち、ヒッピーと呼ばれていましたが、たくさん存在しました。つらいこともたくさんありましたが、今につながる、多くのすばらしい体験と、出会いがありました。私にとって、人生は、いつも終わることのない旅だった気がします。

 子どもたち、私におもしろい知人がいます。先日、彼に急用があり、電話をしました。何度電話しても、呼び出すのですが、出てくれません。でも、半日後に彼から電話がありました。「水谷先生、電話取れなくてすみません。実は、ずっと各駅停車の電車に乗っていました。2日前に、東京から大垣行きの各駅停車に飛び乗り、ずっと乗り継ぎながら、各駅停車の旅を続けてきました。今は、熊本です。鹿児島まで行きます」

 私が、あきれながら、「何で飛行機で行かないの」と聞くと、彼は、「先生、実は、仕事や人間関係に相当行き詰まり、自分を見つめ直したくて、この旅に出ました」と答えてくれました。「どうだい、解決したかい」という私の問いに、彼は、こう言いました。「先生、人生は、新幹線や飛行機のように、目的地まですっと着く、そんなものじゃいけないんです。一駅一駅をていねいに止まりながら、ゆっくりきちんと確実に進んでいくものなんです」。私は、すごく嫉妬(しっと)しながら、感動しました。

 子どもたち、旅に出ませんか。各駅停車で行けるところまで。そして、さまざまな景色や人との出会いをつくりませんか。明日のために。


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