拝啓、

拝啓、婚約者殿
どうにかなりませんか? この寝相……。

エンギワルー鳥も熟睡中の真夜中、突如、右横腹にドスッと見事なまでの蹴りを入れられ目が覚めた。
「ったくよ……」
加害者殿は自分の犯した罪に一切気付くこと無く、どっぷりと夢の中の住人で在らせられる。
「『天使の寝顔』も効果薄れますよぉっと、」
ぐぐぴ、ぐぐぴと繰り返される鼻を摘んでやろうと手を伸ばした瞬間だった。
「ユーリ、大好きだぞ……」
突然の告白の後、目を閉じたままふわっと笑顔が弾ける。かと思ったら、照れたように、足元で揉みくちゃになっていた毛布を引き上げて顔を隠した。
「うっっ」
不覚にもドキッとした。
くそー。なんで寝言ごときにこんなにドキドキさせられてんの、おれ?
こんなのには騙されねぇ。だってコイツは男で82歳で、男で82歳で……。
「ユーリ……」
繰り返す呪文も、コイツの一言には敵わないわけで。
「……まぁ、いっか」
大の字に体制を変えたその隅っこに、おれはちんまりと体を横たえた。それを待っていたかのように、隣りから腕と足が絡み付いてくる。
「しょうがないよなぁ、わがままプーだもんなぁ」
笑いをこらえながら、おれも目を閉じた。
『今度は蹴りを入れられませんように』
と、ささやかな願いを込めて。




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