おはなし T
□やる気の素
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ただいま宿題の真っ最中の渋谷有利です。
そうなんだけど、なんだかさっぱりわからない…
「ヴォルフラム、おまえさ学校に行ってる時に宿題あった?」
「………」
「予習、復習ってなんなんだ?って思わない?」
「………」
返事がない。
「聞いてる?ヴォルフラム」
「あっ、そうか…」
寂しさを覚えたのは、今いるところが日本のおれの部屋だったこと。
「ヴォルフはいないのか…」
心に穴が開くってこんな感じなのかな。
いつもなら絶対に帰ってくるはずの言葉は、聞こえない。
「ヴォルフ…」
「ふーーん」
呟く声に返事があった。
声の主はあろうことか、
「む、村田ー!!」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
「気にしな〜い、渋谷!別にいいんじゃない?素直が一番だよ〜」
おまえにだけは、聞かれたくなかったよ…
「ところで、渋谷。早く宿題終わらせてね。向こう行かなきゃならないから」
「そうなの?わかった!」俄然やる気が湧いてきた。宿題に集中、集中!
「若いって良いねぇ♪」
村田の声は聞こえない。
待っててな、ヴォルフラム。
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