おはなし T

□温もり
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ただ真っ直ぐにヴォルフラムはユーリに向かって歩いてくる。

ユーリの目の前で止まった彼は、酷く悲しそうだ。

「ヴォルフ?」
呼び掛けると、本当に小さな声で「ユーリ…」と返事した。
「なんかあった?」
心配になって、ユーリはヴォルフラムの腕を掴む。
伝わってくるユーリの温もり。優しく包み込むような温もり。
ヴォルフラムは、それから離れたくなくなる。
ヴォルフラムはそのまま、ユーリの肩に頭を乗せる。
「ヴォルフ、どうした?」
「…疲れた…」
一言に含まれた意味は奥深い。
「そっか、お疲れ様。」

そっと伸びてくる腕に安心して、肩においていた頭を今度はユーリの首筋に埋める。
「ユーリ、僕は…」
「ヴォルフ、おかえり。
おれのとこに帰って来てくれて、ありがとな」
「ユーリ…」

ヴォルフラムは強く抱き締めるその腕に、それ以上考えるのを止めた。



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