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□賢者の記憶 ぼくとの未来
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ぼくは眞魔国にいる。
眞魔国に…帰って来れたんだ。
渋谷ほどこちらに執着していなかったはずなのに帰って来れたことにホッとしていて、行き来出来るという事実に喜びすら感じている。
「変なの…」
一人笑って、修復された眞王廟に足を踏み入れた。
まだそんなに日は経っていないのに流れる空気が懐かしくて不意に泣きそうになる。
すーっと深く息を吸い込んで体いっぱいにその懐かしい空気を満たした。心を落ち着けるように。
もう此処には君の魂はないんだね。
姿形無く、声も音も無く、温もりの感じない魂だけの君はいない。
「腐れ縁って厄介だね。君から離れられそうにないみたいだ、ぼくは…」
確信してゆっくりと後ろを振り向いた。
「待っていたぞ、オレの大賢者…」
あの頃の姿のままの君。
今度はちゃんと温もりを感じられる、触れられる形を成して君は立っていた。