W.B.T

□Je suis tombe amoureux
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「終わった……」

簡単な顔合わせをして、本日のミーティングは終了となった。
よろしきゅってなんだよ俺!? 失笑されてた! 自己紹介、失笑されてたよ!!

出だしからこんな感じで接客とか大丈夫なんだろうか、俺。
これから三週間の研修を経て、店がオープンとなる。大学が夏休み期間ということもあって研修時間は朝から夕方までみっちりとある。とはいえ、接客やレジ操作のことを考えると三週間じゃ付け焼刃になるに違いない。
押し寄せる不安とともに、俺はふらふらとした足取りでエレベーターへと足を踏み入れた。

「安達」

エレベーターを降りてすぐ。
正面の壁にもたれていた宇佐が右手を上げた。
どうして宇佐が? ――頭の中が疑問符だらけになる。
宇佐のやつ、確か早速声をかけてきた女の子たちと帰ったんじゃなかったか。

「一緒に帰ろうと思って待ってた」

「え」

「え、って。そんなに意外? 男ってバイトじゃ俺たちだけだろ。仲良くして欲しいんだけど」

まさか宇佐からそんなことを言われるとは思ってもみなかった俺は目を瞬かせる。
ん? と覗き込むように尋ねられて、俺は一歩後退した。

「あのさ、宇佐。俺、安達だけど」

「知ってるけど? 自己紹介もしたし、さっきもそう呼んだだろ」

「いや、そういうことじゃなくて。幸田小の安達なんだけど」

なにしろ6年ぶりの再会だ。忘れられていたのはショックだが、宇佐の記憶の中にいつまでも俺が留まっているとも思えない。
人間、必要のない記憶から忘れていくっていうし。
 
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