† 集団エゴイスト †

□第十一話 cooperation〜連携〜
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「で、綱吉についての話って何?くだらない用件だったら咬み殺すよ。」


「やれやれ、そう急かさずともいいますよ。何せ綱吉君のことなのですから…」


廃屋の中、一定の距離をあけて向かい合った僕達は、互いに隙なく睨み合う。





「君を医療界の総本山、雲雀一族のトップとしてお願いがあります。…ある人物とその周辺のものたちを探ってもらいたい。」



相手の予想外の申し出に、僕は黙って先を促す。



「恐らくその人物が十年前、そして今回の事件の黒幕…。その者を捕まえない限り、綱吉君の安全も確保できません。」



「ちょっとまって…十年前の事件というと、綱吉が記憶を封じたあの事件だとして、今回の事件というのは…?」



「ザンザスのボンゴレボスの座をかけたリング争奪戦にかこつけて、十年前と同じ黒幕が再び綱吉君にちょっかいを出そうと企んでいるということです。」




苦々しそうにそういう相手。
自分の眉間にも知らぬ間に溝ができていることに気づく。



「ザンザスがその黒幕と組んで綱吉を陥れようとしている可能性は?」


むしろそっちのほうがありえる話だ。



「現時点ではまだ黒幕とザンザスの繋がりは見出だせていません。ですが、可能性がゼロではありません。」



「ふーん、それでその黒幕を僕に調べてほしいってことは、こちらの世界の人間ってこと?」



大方の情報なら手に入れることは造作もない。
しかし、この食えない奴が自分を頼ってくるとなると、並大抵のルートではつかめない情報か…。

うちの一族は医療関係のスペシャリストとして、表裏問わず様々な情報が入ってくる。


この世界に片足でも突っ込んで生きている人物ならば、雲雀のものの目をかい潜ることなど不可能。


ならば、これが求めているやつらの情報も恐らく医療に属した人物だろうという予想は軽くつく。




「恐らく…。相手についてわかっていることはごくわずかですが、雲雀一族の情報網を駆使すれば多少なりと何かひっかかるでしょう。」




「ふーん、にしては、やけに詳しいじゃない。」



「伊達に裏の世界を生きてませんからね。それより、これは確証があるわけではありませんが、ザンザスはやはり何か企んでいる様子です。…ただ、どうもザンザスの企みと黒幕の企みは無関係に思える。」


「それでも、その企みが綱吉にちょっかい出そうとしているものなら、関係ない。容赦なく叩き潰すまでだね。」


「無論です。だが、くれぐれも勝手に行動を起こさないで下さいよ。」




「知らないね。僕は僕のやりたいようにするだけさ。」



「君の勝手なポリシーは知りませんが、綱吉君や僕に迷惑をかけるようなことは慎んで下さい。…なにやら色々なものが複雑に結び付いてて…、嫌な予感がします…」



「ふん、綱吉の直感なら信じられるけど、君の勘なんか知らないよ。…それより、今日の夜は大丈夫なんだろうね…?」



今夜の戦いは霧だといっていた。



つまり、この男が今晩戦うということだ。




「君が負けると僕まで回ってこないんだから、死んでも勝って、僕につなげなよ。」



「おやおや、僕へのエールですか?」




「ばか言わないで。負けたら君もやつらも構わず咬み殺すよ。」



「クッフッフッ、まあまず負けることは有り得ませんがね。…多少不利な状況ではありますが、策がないわけではないので。」



「君、その子の身体を借りて戦うつもり?」



「ええ。それで大丈夫そうでしたら彼女に一任します。」



「ふーん、人を乗っ取る悪趣味なところは相変わらずだね。」



「クフフ、君もまた乗っ取ってあげましょうか?」



「ワォ、返り討ちにしてあげるよ…」





ジャキッと互いの武器を構え、睨み合う。


このぴりぴりした空気は実はそうそう感じられるものではない…


相手の力量が確かなことはそれだけでも伺えて、内心では、久々に本気で戦えればどれだけ心地よいかとつい思いを巡らしてしまう。



「ふっ、今回はやめときましょう。今夜の戦いも控えてますし、君を乗っ取るのは少々骨が折れて手間です。」



「まあ君を咬み殺すのは別にわざわざ今夜じゃなくてもいいし、またの機会にしておいてあげるよ。」




互いに構えた武器を同時に下げる。





「では、わかりしだい報告お願いします。」



「……君が生きてたらね。」





そう言い残し、互いに逆方向へと再び足を進めた。








黒幕とやらを調べるために、僕は久々に本家へと向かったのだった。





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