† 集団エゴイスト †

□第十話 fabrication〜捏造〜
2ページ/11ページ

《リボーンside》





最悪だ。


この第一声が、ディスプレイの文字を見た瞬間、俺の頭を猛スピードでよぎった。




ツナの鋭い質疑にどう応えようかとしばし思案した後、この際今の状態を隈なく話してしまおうと口を開いた瞬間、なんともタイミング悪く携帯が鳴った。




一体どこのKY野郎からだ、といらつきながら電話の相手を確かめると、いらつきはさっきの倍に膨れあがる。


と、同時に何故今こいつから電話がかかってくるのかと、軽く混乱してきた。






付き合いが長い分、読めない行動に謎が深まる。



いや、訂正。



付き合いは腐るほど長いが、こいつは昔から不可解な思考と行動だらけのため、こちらが正しく読めた試しなどほぼ皆無だ。


なぜ、俺様がこんな変人との縁を長々と保ち続けなければならないのか、と頭が痛くなってくる。



だが予想外の奴だが、その分電話の内容もつまらないものではないだろう。




出ないわけにはいかねーな、と諦めはわりとすぐについたものの、ツナ達の前でこいつとの会話はあまり聞かれたくない。





つーことで、俺は携帯を片手にツナ達から距離をとるべく森の方へと向かった。












----トゥルルル…トゥルルル…




森の中でも電話は相変わらず鳴り続く。




はあ、と一息つき、こんなもんでいいだろう、と俺は足を止め適当な木の幹にもたれながら電話を耳にあてた。





「…………なんだよ。」



無愛想な台詞にバリバリ不機嫌な声音。
普通の奴ならびびって電話を切ってしまうかもしれない状態でも、今の相手はそんなか細い神経など持ち合わせていない。それどころか、俺の台詞など聞こえなかったのかのように自分の言いたいことを早速しゃべくりだした。


「出るのが遅いですよリボーン。まったく、この私を待たせるなんてどんな神経をしてるんですかね。」


「いたって普通な神経だぞ。むしろ、俺のほうがオメーの神経を…いや、頭を心配してやりたいとこだな。」


「はんっ!貴方それ本気で言ってるんですか?この世紀の大発明家兼大科学者のヴェルデ様々に対して?いやー、まさかここまで貴方が馬鹿だったとは…」



電話口の相手…アルコバレーノの一員、ヴェルデの一言一言に俺はイライラが募る思いだった。




「大発明家が聞いて呆れるな、この変態科学者。オメーの白衣姿ほど胡散臭いものはねーよ。」


「うっさいですよこの真っ黒黒すけ。年中無休で黒スーツな貴方に服装をとやかく言われたくありませんね!」


「んだと?!俺は変装だってするから、黒スーツばっかなわけねーぞ!」


「ああ、そうでしたね。コスプレ衣装も貴方にとっては普段着に属するんでした。これは失礼。」



「コスプレじゃねー!へ・ん・そ・う・だ!!」




普段は人をからかうことのが多い俺にとって、こいつとの会話は昔から鬼門だった。


同じアルコバレーノでも、コロネロやスカルは単純なためからかいやすい。


だが、この心の底から科学と発明を愛する変人は、発言もいちいちねちっこく、この俺様の揚げ足ばかりとりやがって、むかつくことこの上ない。



この際断言しておくが、俺は純然たるSであって、いじめられることに快感は見出ださない!!



つまりこいつとの会話は俺を不機嫌にさせるだけであり、さっさと切ってしまいたいの一つに限る。




「テメー、まじで何の用だよ。天才様は発明に忙しいんだろ?さっさと話しやがれよな。」


「はいはい、これだから余裕のない人間はいやなんですよね。」




まだ焦らすのかコイツ…といらつきでぎりっと携帯を強く握り返す俺。




「あのな、俺だって今は時間を無駄にしたくねーんだ。…予想外の事態がおきて、俺も忙しいんだよッ!」





もう、切ってしまおうか…と半ば本気で思ったとき、ようやく電話口の相手が本題に入ってきた。


「知ってますよ。突然ヴァリアーの奴があの子に接触してきたんでしょう?だから私はそのためにわざわざ連絡したのですよ?」



予想外の話題に俺はぴくりと肩を揺らした。




「リボーン、あなた今沢田ツナヨシに修業をつけているのでしょう?それで何か迷ってることがある…違いましたか?」




「いや、あってる…」




本気で驚いた。


ヴァリアーとの接触くらいなら、あいつの情報網で調べがつかないこともないだろう。


だが、今の俺達の…俺の状況をなぜ遠く離れているコイツがこんなにも詳しく分かるのだろうか?





「ふん、やはりね。そんな貴方にいいことを教えてあげます。…今回はあの子のことについてですから、特別ですよ。」




あの子…つまりツナについてだと、アルコバレーノだって各自協力は惜しまない。
これは俺達アルコバレーノが真実を知った『あの日』に取り交わした約束。


その為なら、たとえ表面上では敵対ファミリーに属していたとしても、アルコバレーノとしてこの問題を第一に考える。



そう決めた時から、俺らはばらばらのまま、陰でうまく繋がっていた。




俺やマーモンはボンゴレサイドにつき

ウェルデやスカルは敵対する側につく。


ラルやコロネロはほどよい距離をはかりつつ、中立という立場を守る。


そうして裏世界の均衡を守りつつ、俺らは裏の裏ではただ一つ…



ボンゴレの未来のボス、いや、かつて俺らを救ってくれた小さなガキの為だけに動いてきた。



本人には存在を知られてさえいない。

一度も会ったこともない。

一言も言葉を交わしたことさえない。



それでも、俺らの誓いは絶対だった。



あの子供の…沢田ツナヨシへの恩返し。


ただそれだけのために…






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ