† 集団エゴイスト †

□第九話 substitute〜代役〜
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「いや〜しばらく見ないうちに大きくなったなツナ!顔なんてますますナナに似て美人になっちゃってまぁ!」





わざとなのか、本気なのか、いまいち真意のつかめない親父のちゃらんぽらんな態度に付き合う気などさらさらない俺は、本題に入るべく話を切り出した。








「それより、父さんが日本に帰ってきたってことは、あっちも動きだしたんだね?」




「・・・・。いや、そういうわけじゃ・・・・」




目線をそれしながら、言い淀む親父。
なんてばればれな動作なんだか。







「さっき街中でスク兄に会った。それに、スク兄が追跡して攻撃しかけていたバジルっていう人、父さんの部下なんでしょ?」



「げ、ウ”ァリアーの奴らもう情報つかんで日本に来てたのか?!ってかどうしてバジルが俺の部下だと?」





「バジル君が『親方様』って言ってた。これって親父が仕事中部下に呼ばせてる呼び名だったよね?」


「あ〜なるほど。」



ふむっと顎に片手を当てながらしばし思案中のポーズをとる親父。




「なんで今更ボンゴレリングを俺に渡すわけ?バジル君を囮を使って、同盟ファミリーのボスであるディノ兄にまで迷惑かけてさ。」



あのリングが俺にとってどんなものであるか、親父もいやというほど理解していたはずではないか。




「今のお前にはあれが必要だと判断したからだ・・・。」



真剣な表情で俺にそう告げる親父の目は、先程のふざけた雰囲気が嘘のように鋭い。


だが、いくら言われようと…





「俺にはもうボンゴレを継ぐ意思も資格もない。だから、俺があの指輪をすることは二度とない・・・。」





「いや、たとえお前が拒否しようと、今のお前はリングをしなくてはならない。これはボンゴレの意志であり、命令だ。」





っむ・・・なんだよそれ。






「俺はボンゴレの配下の者じゃない!だから命令されるいわれもないし、俺には命令を聞く義務はない!!」





「いいから、今から俺の言うことを黙って聞けツナ!!」




「っ・・・、何さ。」



「ディーノから本物のリングは渡されたか?」






「・・・・ここに。」





ポケットからそっと取り出したのは、先程までいた病院内でディノ兄に渡され、拒否したにも関わらず無理やり持たされた指輪だった。






「俺はこんなのいらない。父さんからボンゴレに返しといてよ。」


「それはお前が持っていろ。」


「・・・・いやだ。」



「ツナ・・・。」








「・・・・なんで俺なんだよ。こんな小さなガラクタになんで昔も、今も縛られなくちゃいけないのさ?!」





イタリアで暮らしていた頃も、俺はこのリングを常に身につけるよう強制されていた。


将来ボンゴレを継ぐものであるという、無言の象徴。



俺の意志はそこには一かけらだって入ってなかった。


全てが周りの大人により決められ、促され、強制された行為。


こんな小さな『物』に、他では代用できない価値を付ける時点で可笑しいのだ。


物は所詮物じゃないか。



いくら歴史を積もうと、いくら価値があろうと、いくら意味を付けようと、物がすべてを補うことはできない。





なのに・・・・



「こんなリングひとつの為に、争う人間って・・・。」




象徴は象徴される『もの』がいなければなりたたないではないか。

逆に象徴される『者』は象徴する『物』がなくったって、その身ひとつで十分なのだ。





「それにも関わらず、象徴する『物』なんて作るのは、次にその象徴される者の地位を引き継ぐ人が己の身一つでは不安だったからにすぎない。・・・自分こそ後継ぎに相応しい。その証拠に自分の地位をこれが象徴している。・・・そんな保険的思考のシロモノなのさ。」







「お前がいいたいことは、俺も分かっているつもりだ。…くだらん権力争いに幼いお前を巻き込んじまったのは他ならぬ俺だからな。」



何故同じ初代ボンゴレの血筋であり周りから実力を認められていた親父ではなく、まだ幼く実力も未知数だった俺がボンゴレの次期後継ぎ争いに巻き込まれたのか…




その理由は様々に呟かれてきたが、本当の訳を知るものは恐らくごく小数の者だろう。





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