† 集団エゴイスト †
□第八話 Encounter〜遭遇〜
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ボンゴレリング…
それは、マフィア界のトップと言っても過言ではないボンゴレファミリーの長たる印。
かつて、幼い頃のツナヨシの首に鎖を通してかけられていた指輪。
きっとこいつにとって、切っても切れねぇ因縁で絡み付いているものなのだろう。
そしてそれは、あいつにとっても同じことで…
「で、本物のリングもちゃっかりこっちに持ってきて、一体何を企んでるわけ?………ディノ兄…?」
ツナヨシが俺から視線を外すことなく言葉を発する。
「ちぇっ、バレバレだったか?」
物影からふらりと数歩前に進み、悔しそうながらも、顔は満面の笑みを浮かべた男。
軽い足取りでツナヨシの後ろから現れたのは、金の髪を惜し気なく輝かせた、ボンゴレの同盟ファミリーの若きボスの姿だった。
*****
<ツナside>
「偽物をバジル君に持たせて、本物のリングはディノ兄から渡されるようにする…しかも、リングを追いかけてるスク兄はこっちが偽物だって分かっててやってるし…全く手の込んだことしてるね。」
皮肉を少々混ぜながらも苦笑する俺に、二人は気まずそうに押し黙る。
しかし、それもしばしの間だけ。
「へへっディノ兄…か。ツナからそう呼ばれるのも久しぶりだな!」
そう言ってにかっと嬉しそうに笑う青年に、俺は懐かしさが沸き起こった。
キャッバローネの跳ね馬と呼ばれ、若いながらも立派にマフィアの一主を務める彼。
同盟ファミリーのよしみで、またスク兄とも同級生だったことから、昔から何かと俺に構ってくれた。
周りの大人にはいない、この世界では珍しいくらい明るく朗らかな性格の彼に、幼い俺は幾度となく救われていた。
「そう呼んでくれるってことは、昔を思い出したってことだよな?」
穏やかな口調で確認するように聞いてくる彼の方に顔を振り向きながら、俺はこくりと頷きを返した。
記憶が戻る前に再び俺の前に姿を現した彼を、俺は初対面だと思い、そう接していた。
よそよそしい態度に呼称、偽りの自分で本心を隠したままの言葉…
あぁ、ここでもまた俺は誰かを不快がらせていたのか……
記憶を取り戻したことにより、次々発覚する己の罪。
記憶が戻らなければきっと永遠に気付かなかったそれ。
果たして、知ってしまった罪と、知らずにすむ罪…どちらの方がより罪深いのだろうか?
「んな顔すんなってツナ。別に俺は気にしてねーから!」
知らぬ間に顔をしかめていたらしい俺に、ディノ兄は苦笑しながら言った。
「相変わらず責任感が強いというか…とにかく、ツナはもう少し肩の力を抜いたほうがいいぞ。俺みたいにさ。な、スクアーロ?」
「テメーは力抜きすぎだぁ。もう少ししっかりしやがれ。」
「ひどっ!!;俺がいつ力を抜きすぎてるってんだよ?」
「あ゙ぁ?そんなの、年中無休にきまってんだろが。」
ぎゃあぎゃあとヒートアップする口論。
久々に見る彼らの軽口のやりとりに、ついクスクスと俺は声をたてて笑ってしまった。
そうだ…彼らは昔からこうだった。
穏やかだが、少しおっちょこちょいで危なっかしいディノ兄を、小事を言って叱りながらもついつい面倒をみてしまうスク兄。
そんな遠慮のない人間関係が、俺には少し眩しくて羨ましかった。
わいわいと騒ぎ立てながら次第に口論になっていき、最後にはいがみ合う彼ら。
そしていつも最後には、五月蝿いとブチ切れたあの人のげんこつを頂戴し、片が付くのがお決まりのパターンだ。
−−−−−ドキンッ
(えっ…?)
アノヒト…?
再び不自然に跳ね上げた心臓。
今、俺はなんて言った…?
瞼の裏に一瞬ちらついた誰かの影。
−−−−あれは…
「--ナ!!おい、ツナッ?!どうした?顔が真っ青だぞ!!」
「……ぁ…?…ぇ、俺…」
はっと目が醒めたかのように、肩をびくりと跳ね、俺は繰り返す。
(何だ、今の…?)
「ゔおぃ、ツナヨシ…お前、もしかして」
まさか、というように目を見開きながらじっとこちらを見つめるスク兄。
だが、彼の言葉はまたも最後まで告げられることなく、口元で留まってしまったのだった。
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