† 集団エゴイスト †

□第八話 Encounter〜遭遇〜
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「っち、まだ立てたのかてめー。」





俺の攻撃を防いだのは、家光の遣いであるガキだった。ボロボロの身体でなんとか防御しつつも、もはや体力も限界に近いらしく、武器を構えた腕は小刻みに震えていた。







それでも意思の力で必死に身体を奮い立たせ、こちらを睨むこいつの顔。



そこには、こいつの決意というものが滲み出ているかのごとく、強い思いが感じられた。



(あぁ、こいつもきっと何か心に、誰にも譲れねぇものを持ってんだな…)




そう思うと同時に、俺はふとツナヨシは今どんな表情をしているのか気になった。



攻撃の手は緩めず、俺はツナヨシのほうに視線を向けその様子を伺う。






仲間を傷つけられ怒っているだろうか?

それとも悲しみを感じているのだろうか?


驚き?歎き?落胆?



思いつきかぎりの負の感情が頭を過ぎる。








だが、予想に反しあいつの表情からは怒りも悲しみも混乱も何も読み取れなかった。




ただ、今あいつの目には、無表情に剣を振り回す俺の姿がはっきりと映っているだけ。




しかしその瞳に写し出された自分の姿が、まるで己の罪の自覚を促す鏡のようで…







「ツナヨシ……」







俺がそんなツナヨシの姿に気を取られ、僅かににできた一瞬の隙。




その油断を相手は逃さなかった。






「うおぉぉ!!」



「ッチ、くそが!」



一気に詰められる間合い。
刀の内側に踏み込んでこられると、こちらの攻撃はかなり制限される。


だが所詮ボロボロのガキが最後にみせた悪あがき。




ぶぉんッと振り回されたガキの武器が、俺の頬に薄く傷をつける。



しかし、次の瞬間には剣の柄で相手の鳩尾にきつい一撃を食らわす。




「っぐ!!」



ガキが勢いよく吹っ飛ばされる。
人間の急所の一つを強打されたとあっては、いくら打たれ強いであろう相手も、もはや立つのも困難な位ふらつき、意識も朦朧としているようだ。






「ぬかったな小僧。」



俺は微かに口元を上げながら、相手にあるものを掲げ見せた。




「っ?!な、何!!」




顔を真っ青にしながら、俺の手元にある“物”を見つめるガキ。



「ふん、油断したな。ふらふらの状態で敵の懐に入ってくるテメーが悪い。」




俺が先程の攻撃の最中に、ガキの懐から掠め取ったもの…それは、









「ボンゴレリング…だね。」








俺の声が告げるより先に声が他方から聞こえた。





「、…流石だな。」




それは、先程まで黙ってことの成り行きを見ていたツナヨシだった。




「沢田…殿、誠に申し訳…ありま…せ、…」



ぐっと顔をしかめたと思ったら、とうとう気を失ったらしいガキが、よろめきながらその場に倒れた。




「ボンゴレの見透かす力かぁ?相変わらず便利なもんだな。」



まだボンゴレのエンブレムがついた小箱しか見せてないのに、中身がはっきりと分かっているらしいツナヨシ。



「なんで今更そんなものを持ち出してくるのか分からないけど…スク兄はそれが偽物だと知ってて追いかけてきたんでしょ?」




「っ!ほぉ、そこまで分かっちまうのかぁ!」





驚いた。こいつの見透かす力は昔から見知ったものだったし、今更驚くこともねえだろうと思ってたが、まさかこんな僅かな間にここまでのことが分かっちまうとは…




家光の遣いはこれが偽物だとは知らずツナヨシに渡しに来たようだが、生憎とこちらはそれがダミーだと知っている。


それを承知でちょっかいをかけにきているのだ。



ボスからは追いかけろとしか言われてねえから、別に奪わなくてもいいのだが…



それだと俺が気に食わねぇ。



ツナヨシに偽物など持たせたくない。


こいつに似合うののは、本物のボンゴレリングなのだ。



だから…




「この指輪は俺が頂いてくぜぇ。」




偽物など、こいつの視界から消してやろう。






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