† 集団エゴイスト †

□第八話 Encounter〜遭遇〜
5ページ/12ページ


何だ…?何がおかしい?





忘れていた過去について思い出し笑いできるという今の自分に、慣れないせいで違和感を感じたのか?


いや、そんなんじゃない…




何故だか分からないがしっくりとこない。

そう、例えるならそこに必ずあるはずの何かが足りない。



俺が不審そうな顔を浮かべたことに気付いたのか、スク兄がこちらをじっと見つめてきた。




「ツナヨシ……お前は…」



少し躊躇しながら、スク兄はぐっと歯を食いしばった後、何かを俺に告げようと口を開いた。



だが、




「十代目!!お怪我はありませんかっ?!」

「ツナ、大丈夫かッ?!」




こちらに向かって走ってきた隼人と武が俺とスク兄を隔てるように立ち並び、武器を構える。


どうやら、街の騒ぎに気付き慌てて追い掛けてきたらしい。



「ちっ、うるせえ奴らがきちまったか。」




二人に睨まれながらも平然とした様子のスク兄。



「テメーこのお方に少しでも手を出したら許さねーぞっ!!」


「一生後悔するくれぇ捻り潰してやるのなっ!!」




威勢のいい二人の言葉に、スク兄はぴくりと一度だけ肩を動かした。


だが俺は嫌な予感が胸に渦巻いていた。



普段は好戦的で戦いの最中でも強者と一戦を交えることができる喜びに、つい口元に笑みを浮かべてしまうスク兄。
だが、今の彼の顔はその時のような笑みを浮かべるでもなく、ただただ無表情だった。




(…ダメだ、…)






彼の無表情とはつまり…







(スク兄が本気でキレたら二人が相手でも敵わない)






マジギレだ。







「う゛おぉい、テメーら一体誰に向かって言ってるつもりだぁ?」



普段の怒鳴るような声音とは違う、静かな声。



それが彼の怒りの度合いを表すかのように、いやに耳に響いてきた。




「後悔するのはどっちか…はっきりさせてやるぜぇ」




鋭い目にスク兄が浮かべるのは、激しい怒りと脆さを含む後悔の念だった。







*******
<スクアーロside>



逆ギレだ。

そんなこと分かっている。

それでも、ツナヨシの周りにやってきたガキ共の言葉は俺の怒りを一気に沸き立たせた。


『テメーこのお方に少しでも手を出したら許さねーぞっ!!』

俺がこいつを傷つけるわけがねぇ。
だってこいつを守るのは俺らの役目だったのだから。


それなのに………





俺らはこいつを守ってやれなかった。




『一生後悔するくれぇ捻り潰してやるのなっ!!』




一生分の後悔?
そんなのとっくの昔からしてる。





もしあの時こいつが壊れるのを防ぐことができたら…

きっと今でもこいつの隣にいて、こいつを守っていられたのは俺達のはずだった。


だがそれももう今じゃ遅い話。



ツナヨシの傍は守護者のガキどもが囲い込み、俺らは近づくことさえ許されねえ。

いや、たとえツナヨシ本人が許したとしても、あいつはもうツナヨシの隣にいることを自分で許さないのだ。




「お前らに何がわかる?」



こいつが壊れた時に、傍にいなかったくせに…



こいつが壊れた時にすぐ傍にいたのに、何もできなかった俺らの気持ちの何が分かるというんだ。







振りかざす剣は光を反射し、ギラギラと輝く。



ばっと身を翻し、俺は猛スピードで相手の懐まで突っ走った。





「っ何?!」


銀の剣が嵐の守護者のガキを吹っ飛ばし、勢いづいたまま隣の雨の守護者に刃先を向ける。




「っぐッ!!」



間一髪自分の刀で俺の攻撃をなんとか防ぐものの、雨のガキも衝撃で後ろに吹っ飛ばされた。





…弱え。こんなひ弱なやつらに、ツナヨシの隣を譲らなければならなかっただなんて…





「うおぃ…てめーらがこんなに弱くてどうする?もしまたツナヨシが危機に陥った時、こんな弱い奴らにツナヨシが守りきれるのかぁ?」





頭に上った血が、思考を嫌な方へと引きずる。



もしまたツナヨシが何かに巻き込まれてしまったら…



その時、誰がこいつを守ってやれるのか?



こいつの隣にいると決めたのなら、強さを持ち合わせるのは絶対の条件だ。



弱いやつはこいつの傍にいらねぇ。


でないと、弱いやつを守ろうと、ツナヨシがそいつの分まで痛みと傷を負うことになるのだから。




自分を守るだけの強さは必要最低限。


守護者とならば、その名の通り、こいつの身体を守り、精神を護るだけの強さがなければならないはずだ。






「それがこの様か…」




年若いせいというのは、言い訳にはならねえ。



この世界がそんな甘っちょろいものでないのは、周知の事実だ。







「てめーらにツナヨシの守護者を名乗る資格はねぇよ……」




血走る眼の中にぶっ倒れたガキ二人を見据える。



とどめをさすべく振り上げた刀。





だがそこに、一つの影が突然間に乱入し、俺の剣の一撃を受け止めた。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ