† 集団エゴイスト †
□第八話 Encounter〜遭遇〜
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<ツナside>
「はあ…はぁ……大丈夫ですか沢田殿?」
怪我のせいか、荒い息で額に汗を浮かべながらこちらを振り返る少年。
「え、う、うん。あの、…」
「ここまでくればあいつもまけたと思いますが…何せ奴が相手ですから、油断大敵です。」
じっと物陰に身を隠しながら辺りの様子を探る目の前の人物に、俺はどう声をかけるべきか躊躇していた。
確かに先程感じたデジャブな気配。
昔どこかで知り合ったのかとも思うが、それでも、俺はこの少年の姿を見たことはない。
断言できるか今の俺には怪しいものだが、この空のように澄み渡った水色の瞳は一度見たら絶対に忘れないと思う。
じゃあ、何で俺はこの人のことを懐かしいと思うのだろう?
「あの…、君は一体?;何で俺を引っ張ってきたんですかっ?!!てか何で俺の名前…って、そういえば怪我!!大丈夫なんですかちょっと!?」
相手の素性が分からない分、俺もダメツナとして対応する。
「拙者はバジルと申します。親方様の命で沢田殿にとあるものを渡すようにとお預かりして参りました。」
そう言って懐に手を伸ばすバジルと名乗った少年。
(名乗ったってことは、やっぱり初対面ってこと?それに親方様って…)
どこかで聞いたことがあるような単語に頭を捻らせつつも、いまいち現状を理解できない俺は、成り行きに身を任せるしかなさそうなので、大人しく少年の動作を眺めていた。
それからすぐ懐から何かを探りあてたらしい少年は、それを取り出そうと腕を引く。
だが、
「う゛ぉぉい、こんなとこに隠れてやがったかテメー。」
少年のその手は目的の物を取り出す前に、再び現れた敵から身を守るために、武器へと向けられたのだった。
「くっ、もう見つかってしまったか…;沢田殿、早くこちらに隠れてください!!;」
バジル君が俺と敵との間に自らの身体を割り込ませ、武器を構える。
だが、バジル君の警告は俺の耳を素通りしていった。
俺は、間近に迫った敵の姿を見上げた瞬間、その場で足が石になってしまったかのように固まってしまったのだった。
「…………スク兄…?」
見覚えのある銀髪は、記憶の中のものよりかなり長く伸び、身長も体格も、大人らしくしっかりとしたものに成長していた。
「よ゛おツナヨシ、久しぶりだなぁ゛!」
特徴的な濁音混じりの声は昔のままで。
バジル君以上に懐かしさが蘇る相手の気配。
少し前に、ランボの協力のもと取り戻した記憶に混じっていた幼い頃の思い出。
俺がボンゴレの屋敷にいた時に、心を許し傍にいれた数少ないものの中の一人。
スペルビ・スクアーロ
俺は彼をスク兄と呼び、本当の兄のように慕っていた。
「その呼び方をするってことは、本当に記憶を取り戻したみてえだなぁ゛。」
昔と同じ、不器用でちょっといびつながらも、優しい笑みを浮かべるスク兄。
「何でスク兄がここに?どうしてバジル君を追い掛けてるわけ?」
「まあ任務の都合でなぁ゛。お前も邪魔するってんなら容赦しねーからなツナヨシッ!!」
挑戦的な態度でこちらを睨むスク兄。
昔から喧嘩っ早いが、意外と面倒見がよく、稽古がてらに俺に剣術を教えてくれたこともあった。
才能にも恵まれ、しかし努力も怠らない、それなのに何故かいつも貧乏くじをひかされ、人一倍苦労人である。彼はそんな人物だった。
よく理不尽な理由で頭をどつかれてたな…などと昔のことを思い出し、つい苦笑してしまった。
しかし、ふと俺は何かいい知れぬ違和感を覚えた。
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