† 集団エゴイスト †
□第七話 Reproduction〜再生〜
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「ツナー、ランボさんにもゲームやらせろーっ!!」
「ランボっ!!邪魔♯%∂駄目#§!!」
俺達が部屋でゲームをしていると、家の居候のちびっこ二人が入ってきた。
ゲームの好きなランボは、よく俺と一緒に対戦ゲームなんかで勝負している。
イーピンは自分でやるよりも、俺達のプレイを見ている方が好きらしく、よく傍らで眺めていた。
「あー、隼人、武、ちび達も一緒にいい?」
二人の前ではダメツナの振りをする必要も無くなったので、俺は家では本来の俺のまま二人に接していた。
「ああ、ツナがいいんなら俺は全然OKだぜ。」
「テメーあほ牛!十代目の華麗なゲームさばきを邪魔すんじゃねーぞっ!!」
「へっへーん。おれっちはゲームめちゃんこ強いから、お前になんて楽勝で勝っちゃうもんねー♪」
「んだとコラーっ!!上等だテメー勝負しやがれっ!!こてんぱんに負かして泣き見せてやるぜっ!」
仲がいいのか悪いのか、隼人とランボはよく突っ掛かりながらも一緒に行動することが多い。
もちろんよく喧嘩もしてるが、知らないうちに仲直り…というか、喧嘩する前と同じ状態に戻ってるんだから、不思議なものだ。
そんなどこか兄弟のような二人を、俺は微笑ましく思いながら、ゲームのコントローラーを握って真剣な表情をしている隼人とランボを見遣った。
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「それじゃあ、また明日ね二人共。」
「あぁ、またなツナ!」
「失礼します十代目!!」
大分日も暮れてきた頃に武と隼人は帰っていった。
また明日、という掛け声は、言うのも言われるのも、今の俺にはちょっぴり切ない。
明日会う時には、少しは何か思い出してるだろうか?
それとも明日も今日と変わらないままなのだろうか?
時間の経過は、今の俺の記憶を形作りはするが、過去の記憶を思い出す助けにはならない。
あぁ、どうすればいいのだろう…。
ぐるぐると回る頭の中に、嫌気がさしつつも、どうしようもないとどこか諦め気分な俺。
だめだ、逃げたり弱気になるのはまだ早い。
皆は焦らずゆっくりと思い出していけばいいと言ってくれた。
優しい優しい皆。
俺の身勝手な行為で記憶から消されていたというのに、責めるでもなく、ずっと黙ってただ傍らで支えてくれていた。
こんな俺のために。
過去の俺がなんで記憶を封じたかは分からない。
きっとそれなりの理由はあったのだろう。
もしかしたら思い出さないほうがいいかもしれない。
思い出したら傷つくかもしれない、嫌な思いをするかもしれない、とてつもない恐怖を味わうかもしれない。
それでも、いつかちゃんと思い出すから。
絶対絶対思い出すから。
だから、今はまだ少し皆の優しさにもたれ掛からせて。
◇◇◇
「ツっくーん、ちょっとランボちゃん探してきてあげてくれないー?」
自室で本を読んでいたら、下の階から母さんの声が聞こえてきた。
「ランボがどうかしたの?」
「実はランボちゃんさっき出かけてくるって言って外に行っちゃったんだけど、なんか空が怪しいのよね。」
「あー、確かに急にどんより曇りだしてる。」
隼人達を見送った時は、ほんのりオレンジに色付い綺麗な空と太陽だった。
あの空が、今では灰色の厚い雲と、ごろごろという不穏な音で、姿を一変していた。
「ランボちゃん傘持ってってないし、それにあの子雷が嫌いだったから…」
心配だから迎えにいってあげてくれない?と頼み込む母。
特に用事もなかったし、今ごろ雷の音にびびっているだろう牛柄の子供を想像して、俺は苦笑を浮かべながら承諾した。
そしてランボのお気に入りの牛柄の傘と自分の傘を携え、俺は玄関の扉から出て行った 。
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