† 集団エゴイスト †
□第四話 Absorption〜吸収〜
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◇◇◇
「今日はありがとうございました。」
時刻はもう夕方。
そろそろ上がるかというリボーンの言葉を合図に俺達は練習を終えた。
「おう!またいつでもボクシングをやりにこい。」
沢田は才能があるぞ!と目を輝かして言う相手につい苦笑を浮かべてしまう。
ダメツナにボクシングの才能があるのかどうかは甚だ疑わしい。
だが、この人が嘘やお世辞を言うとも思えない。
(もしかしたら、俺の本性に気付いてるとか…?)
鈍いかと思えば意外に鋭い、笹川兄妹は案外油断ならない人物なのかもしれない。
それでも…
「はい、また一緒にやりましょう。」
なんだかんだ言っても、温かい雰囲気が心地よいこの人とまた一緒にボクシングやるのも悪くはないと思ってしまったりして。
「それじゃ、お兄さんさようなら。」
「ああ、また明日学校でな!」
自然と自分の口から出た『お兄さん』という単語に何故か違和感なんて全く感じず、寧ろどこか懐かしさまで含んでいるように思う。
まるで、俺にも昔から兄がいたかのように…
そんな訳無いと頭ではきっちり理解しているが、どこかそんなことを思ってしまう自分に俺は心の中で苦笑した。
最近いろんな人に出会い、様々な事を感じるようになったと思う。
以前のただダメツナとして自分を偽り無駄に過ぎていくだけの日常が嘘のようだ。
広がってゆく人との繋がり
増えてゆく心地よいと感じる場所
理解したいと思う人の心
失いたくないと思うものが数を増す度に、心の中で警鐘が鳴り響く。
・・・まるでそれが危険を孕んでいるかのように
--------ゾクッ
「おいツナ、どうかしたか?ママンが心配するだろうから早く帰るぞ。」
「あ…、うん。何でもない。そうだね早く帰ろっかリボーン。」
突然立ち止まった俺に、リボーンが訝しみながら帰宅を促す。
(さっきのは何だったんだ…?)
先程まで心を占めてた温かな思いの数々が、急に冷え切るかのような震えが突然背筋を過ぎった。
超直感と似ているがどこか違うように感じたそれ。
(…嫌な感じ。)
せっかく今日はちょっといい日だったのだ。
気にはなるが、こんな気持ちさっさと忘れてしまおう。
あぁ、今日は久しぶりにゆっくり寝れる気分だ。
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