† 集団エゴイスト †
□第四話 Absorption〜吸収〜
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あーようやく授業が終わったぁ…。
最近“あれ”のせいで身体は怠いわ頭はぼーっとするわ熱は上がり気味だわ最悪だし。
「ツナ君」
「んっ?」
呼ばれた名前に振り向くと、そこには一人の女子生徒がいた。
「なんか今日辛そうだったけど、大丈夫?」
風邪気味?と心配そうに伺ってくる様子についついこっちも苦笑してしまう。
「ううん、大丈夫。ありがとう京子ちゃん。」
同じクラスの笹川京子ちゃん---普段いつも笑顔でちょっと天然なこの子は、実はかなり人の機微に聡い。
ちょっとした変化も見逃さない、本当によく気付く子だ。
本人は無自覚だろうけど、俺でもつい感心してしまう事があるくらい。
「ちょっと昨日遅くまでリボーンとゲームやっててさ。寝不足気味なんだ。」
「あ、そうなんだ。よかった病気じゃなくて。」
俺が病気ではないと知ると、ほっとした表情になる。
「リボーン君もゲームやるんだね。」
「うん、あいつ結構強くてさ。昨日もついつい二人して夢中になっちゃってさ----」
以前俺の家庭教師に会った事のある京子ちゃんは、リボーンとも結構仲がいい。
「ふふ、やっぱりツナ君もリボーン君も男の子だね。私のお兄ちゃんも格闘ゲームとかですぐに熱くなってるよ。」
「へー京子ちゃんってお兄さんいたんだ。」
「うん、一個上に一人ね。ツナ君は一人っ子?」
「うん、だからちょっと兄弟とかって憧れるな。」
「けどツナ君にとってリボーン君が弟みたいなものじゃないかな?」
「あーあいつは…はははは。」
本人に『お前今日から俺の弟ね』なんて言ったら、きっと腹を立てて拳銃が火を噴きそうだ。
とそこに、
「俺はツナの弟じゃなくて先生だぞ。こいつの弟役だなんてまっぴらごめんだな。」
ナイスタイミングで本人登場。
「あ、リボーン君。こんにちは。」
「ちゃおっす京子。ちょっとツナを借りてくぞ。」
「え、ちょっと何処行くんだよリボーン?」
ぐいぐいと俺の手を引くリボーンに、足を縺れさせながらもついて行く。
「じゃあねツナ君、リボーン君。」
そんな俺達を京子ちゃんはにこやかな笑顔で送り出した。
◇◇◇
「−…っで、一体何処に向かってるわけ?」
周りは普段あまり馴染みのないクラブハウス
一体こんなところに何の用があるというのか?
「今日はお前に学生としての本業、---青春で汗を流すと共に男の友情を深めよう---をテーマにしたカリキュラムを施してやろうと思ってな。」
なんなんだその怪しいテーマのカリキュラムは。
「普段冷めきっているお前に、情熱と若さとは何かを教えてやろうという俺の仏心だ。」
「いや、情熱はともかくなんでお前に若さまで教えてもらわなきゃいけないんだよ…。」
俺まだ14歳なんですけど…
「まあ気にすんな。せっかくお前の為に相手も用意してやったんだからな。」
相手…?一体何の相手だよ?
「そいつも待ちかねていることだし、とにかく入れ。」
そう言われて、俺はリボーンが示したクラブハウスに入った。
「ここは…えっ、ボクシングのリング?」
目の前にはよくテレビで見かけるリング。
そしてその上に立っているのは、
「あ、朝の…」
「おう!待っていたぞ沢田。」
今日の朝、学校近くの角でぶつかってしまった先輩が、ジャージ姿で立っていた。
「了平はボクシング部の部長だぞ。ツナにもボクシングの熱情を教えてくれるよう俺が頼んでやったんだ。」
えへん、と俺の隣で踏ん反り返るリボーン。
その姿はというと…
「…………お前何でそんな格好してるの?」
いつものビシッときめた黒スーツはどうした…
「パオパオ老師!」
え、パオパオ老師?
「今日はツナを頼んだぞ了平。」
「おう、弟弟子の為だ!任しとけ!!」
え、弟弟子?
「お前と了平は俺の弟子って事にしといたぞ。そんで俺は世界に誇る最強の格闘家パオパオ老師だ。」
…いや、世界に誇れるやつは頭に象の被り物はしないだろ…
時々こいつのコスプレのセンスを本気で疑いたくなる俺だった。
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