† 集団エゴイスト †
□第四話 Absorption〜吸収〜
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《リボーンside》
朝、ツナ達とは別々に俺は並盛中に向かった。
着いてから特にすることも無かったので、隠れ家の一つでのんびり茶を飲んでくつろいでいた。
ふとカップに向けていた視線を壁の方に向ける。
近くに見知った気配が近付いてきたからだ。
(……何かあったな。)
俺は飲みかけのカップをテーブルに置き、おそらく自分を探しに来たであろう相手を隠れ家へと迎え入れた。
◇◇◇
「じゃあ、お前はあいつのあの発作をどうにかしてやれるのか?」
「完全に治せる…っというわけではない。多少マシになるだろうってくらいだがな。」
「それでも、今は少でも負担を減らしてやれるならありがたいぜ。」
訪ねて来たのは一人の男子生徒。
名前は、笹川了平。
こいつも今回の計画の大事な役目を担う者の一人だ。
「だが、偶然でもお前とツナがぶつかったのはラッキーだったな。お前が“あれ”を知ってたのにはちょっと驚いたが…」
「昔、初めて会った時にも、あいつは“あれ”に苦しめられていたぞ。」
「……?!その時はまだツナは今とは違ったはずだ。何であの症状が出てんだよ?」
「さあ、俺にも詳しい事は分からんが、当時も多少なりと抑えていたんだろうな。」
「………ちっ、ばかやろうが。」
「あいつらしいといったら、らしいけどな。」
「まったく…昔からあいつは自分を抑えてばかりなのかよ。」
「それでも、昔の方が断然マシだったぞ。今のあいつは相当やばい。俺が一瞬触れただけで直ぐに気付いたんだからな。」
「ああ、分かっている。あいつもおそらくは本能的に気付いてる筈なんだが…まだ意識の方が拒絶してるんだろうよ。」
「それでも…!早くしないと本当に手遅れになるぞ?!いくらなんでも異常すぎる。あれではあいつの身体が持たないぞ…っ!」
ダンッ…と了平がテーブルを拳で叩く。
その苛立ちは苦渋に満ちた表情からも窺える。
「…俺も、本当ならもうそろそろ断片的にでも記憶が戻ってきてもいい頃だと思っていた。」
だが、実際の成果は芳しくない。
「俺の考えが甘かったのか……」
獄寺や山本に接触しても、ツナの心は今だ変化なし。
「おそらく何かきっかけがないといけないのかもしれない…。」
「きっかけ…?」
了平の怪訝そうな瞳がこちらを向く。
「……近いうちにイタリアから、あいつを呼び出そうと思っている。」
「なっ?!それは本気か?!」
「ああ。もしお前とツナが接触しても変化がないのなら……もうそろそろ最終手段に出るしかないだろうな。」
「……周りの奴らは絶対反対すると思うぞ。」
「承知の上でだ。それでも、ツナが壊れてゆくのをただ見ているだけより断然マシだろ。」
「・・・あぁ、そうだな。」
はぁー、と先程まで溜めていた息をはく了平。
「それじゃあ、今日の放課後に俺がツナを呼び出しとくから、了平後は頼むぞ。」
「おう、任せとけ。俺の全力で出来る限りの事をする。」
そう言って、客は頼もしい台詞を残し、部屋を出て行った。
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