† 集団エゴイスト †
□第四話 Absorption〜吸収〜
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あと少し、もうあの角を曲がればすぐ学校、という所。
その角を曲がると同時に何かが俺の視界を遮った。
----ボスッ。
「あ、すみません!」
どうやら誰かとぶつかってしまったらしい。
相手も並盛中の制服を着ており、見た目からして上級生らしい。
「おお、すまんな!ロードワークに夢中で、あまり前を見てなかったようだ!」
そう言って、その人は再び走り出して行ってしまった。
「十代目!!お怪我はありませんでしたか?!」
「大丈夫かツナ?」
「え、あ、うん。全然大丈夫だよ。」
「あの野郎、十代目にぶつかりやがって!!十代目の身に何かあったらどうするつもりだ!」
「ちょ、獄寺君!俺は本当に平気だから!!」
「あはは、獄寺熱いなー。」
そんなやりとりをしつつ、俺達は校門を入っていった。
◇◇◇
(……いい人だったな。)
このダメツナの演技のせいで、たいていの災難は体験していると言っても過言ではない俺。
嫌な上級生は、ぶつかった相手が下級生、しかも明らかに弱そうなダメツナ相手となると、すぐに文句を付けたり、時には金をせびったりもする。
皆が皆、そういう上級生とは限らないが、あんな嫌な顔一つせず、颯爽と過ぎていった相手は初めてだった。
ぶつかったのは一瞬だったが、あの人からはどこか暖かいものを感じた。
(こんな心を持った人もいるんだな…)
人は必ず心のどこかに冷たい感情を隠し持っているものなのに…。
(もしくは、俺みたいに危険な熱を抱えているかね…)
だけど、あの人から感じたのは心地良い暖かさ。
まるで、さんさんと降り注ぐ暖かな春の午後の日差しのようだ。
ちょっと珍しいものを見たせいか、先程まで陰っていた俺の気分は、いつの間にか晴れやかなものに変わっていた。
(…また会えるといいな。)
どこの誰だか分からないけど、今度会う機会があったら話してみたいな。
*******
《了平side》
ふとした瞬間に感じた熱。
ぶつかったのは本当に偶然だった。
いつものように、朝のロードワークで学校の周りを走っている最中だった。
自分をもっと鍛える為に。
角を曲がったとき当たった『何か』の正体が分かった時、驚きと共に、らしくもないがちょっと感動してしまった。
(俺達はまたここから始まるのだな。)
ただ、その感動が過ぎ去った後、すぐに感じたのは相手の異常な熱。
見た目は普通だし、顔色もそれほど悪くはない。
それなのに触れたら直ぐに分かるほど、熱だけが異常に高いのだ。
(…これはもしかして…)
思い当たる事がある俺は、急いである者の元へと向かった。
---待ってろよ。お前がまた苦しんでるのなら、俺がどうにかしてやるから。
---今度は俺達がお前を救う番だから。
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