† 集団エゴイスト †
□第四話 Absorption〜吸収〜
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晴れの守護者に課せられた役目…
それをこなせるのはこの世でただ一人。
あいつがツナの守護者であった奇跡が本当に喜ばしい。
いや、なるべくしてなったのだから奇跡でもなんでもないか。
守護者の役割は生まれる前からもう既に決められている事だ。
だから勿論他の守護者達だって、ツナにとってかけがえのない奴らばかり。
その力と能力はどれもツナの為だけにあるようなものだ。
それでも、数ある特殊な能力の中でも特に珍しいだろう了平のそれ。
----ツナの炎の熱を吸収できるという力。
それはやはり晴れの者にしか出来ない事だ。
雨でも嵐でも雲でも雷でも霧でもいけない
晴れだからこそでき、晴れだけにしかできない役割。
しかしこんな能力があるやつは歴代の晴れの守護者の中でもきっとこいつだけ。
それがツナの守護者として、ツナの傍にあるということはやはり・・・
・・・ずっと以前からこうなることが決定事項だったというのか…?
ツナの身体に起きている異変。
本人も何か感じるものがあるのだろうが、依然として原因は分かっていないだろう。
いや、分かろうとしていないのだ。
あいつの超直感が自分の身体の不調を感じ取らない訳がないのだから。
ただ本人が知る事を拒んでいる。
だからこそあいつの身体は今だに“あれ”が起き続けているのだが…
知ればきっと起こらなくなる。
だが、それ以上の事が起こるかもしれない。
それはその時にならなきゃ誰にも分からない。
しかし、今の時点ではっきりとしていること・・・
---“あれ”が起こるのはツナが記憶と一緒に、自分の“炎”までも、心の奥底に封印してしまったから……
ボンゴレの強大な炎を身に潜めた人間。
普通の者なら一瞬で燃え上がり灰になってしまうだろう。
あいつだからこそ、身体と精神がそれに堪えられているのだ。
だがその負荷はあいつの身体に重く乗しかかり、あいつの精神を蝕んでいる。
---じわじわと緩やかに…
------しかし確実に……
その身体が炎に熱され
その精神が熱に犯され
その器を少しずつ少しずつ壊していくのだ。
早くその熱を解放しなければ、“器”は見るも無惨に粉々になってしまう。
並の者…、いや、ボンゴレの血が流れていたって、他人が炎の熱を吸収するなんて事出来るわけがない。
――晴れの守護者以外出来るわけがない。
だからこそあいつはツナの隣にいるのだ。
ツナを壊してしまわないために、晴れの者はその身にその力を秘めて生まれたのだ。
はんっ、まるで茶番だな。
面白い程にぴったりあつらえられている『役者』。
場面場面に合わせて上手く働く『能力』。
それはきっと、呪われたボンゴレの血による『悲劇』。
まるで目に見えない誰かに、台本どうりに操られている人形のような気分だ。
過去に起こった事も、今現在起こっている事も、これから先に起こるであろう事も--…
変える事の出来ない真理だとしたなら、なんて残酷な真理なんだろう。
暗い過去と喜ばしい事情、先の読めないな未来に、皮肉な真理…
どれをとっても結局流れは変わらない。
俺に出来ることは限りなく少ない。
だって俺はあいつの守護者でさえないのだから…
それでも、俺にだからこそ出来る事もあるはずだ。
俺に与えられた役割…
今はそれを精一杯あいつの為に果たしてやるよ。
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