† 集団エゴイスト †
□第十三話 expunge〜抹消〜
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<コロネロside>
リボーンからの連絡を受けて、黒幕が襲撃してくるであろうこのグラウンドで油断なく待ち構えていた。
だが、雲のリング戦は始まってすぐに、もう終盤を迎えていた。
雲雀の圧倒的な強さに、相手のモスカと呼ばれていた機械は早々にやられていたのだ。
まだ中学生のはずの守護者がこれ程までに強いだなんて驚いた。
おそらく黒幕も予想していなかったであろう短時間での決着。
黒幕やザンザスサイドはどう動くのか…。
観客席から周りに視線を凝らすも、今のところ怪しい動きはなかった。
…と、そこに、
なんとモスカが暴走しだしたという。
反則技だがチェルベッロも止めはしない。
怪しいやつらだが、こいつが味方であると今では信じられる。
きっとツナを助ける為に意味があっての行動なのだろうと思う。
恐らく、モスカの雲の炎がまだ溜まっていないため、モスカの暴走を装って戦いを続行しようとしているのだろう…。
それにしても、攻撃が無茶苦茶だ。
このままでは、周りに被害が出るのも時間の問題だと思われた。
どうする?こちらが今動いてもいいのだろうか?
黒幕がいまだ現れない中で、俺は己のすべき事に迷っていた。
と、そこに物凄いスピードでこちらに向かってきている気配がした。
いや、気配がしたと思ったらもうすでにそいつは目の前にやって来ていたのだ。
「これはどういうことだザンザス…」
死ぬ気の炎を額と拳に宿したツナが、モスカの攻撃を止めていた。
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<リボーンside>
「ち、もう始まっちまったか。」
ツナから少し遅れてグラウンドに到着し、辺りの様子を伺う。
「リボーン、どういうことだコラ」
ツナは今夜はこちらには来ないはずじゃなかったのか、と問いかけてくるコロネロに、ツナが超直感で何かを感じここに向かった経緯を説明する。
「モスカは一体どうしちまったんだ?暴走か?」
「恐らくな。動きが何かおかしいし、ザンザスもどこか焦っている気がするぞコラ」
モスカの猛攻撃をいなしながら、ツナはふと何かに気づいたように顔を上げ、モスカの胴体を真っ二つに熱で割った。
なんと、その中から現れたのは、行方不明とされていた九代目だった。
「九代目っ?!どういう事だコラっ!」
雲の炎を貯めるための戦いに何故九代目が?
慌てて九代目の元に駆けつけながら、ふと昔読んだことがあるイタリア軍とボンゴレの共同研究の論文を思い出した。
それは、大空の炎を他の属性の炎として変換する装置についての研究だった。
大空の炎は他に比べて珍しい特徴を持っており、変換すれば他のどの炎とも同じになり得るということだった。
おそらく今回のリング戦で、雲雀とはれる程の雲の炎をともせる守護者候補がいなかったため、九代目はモスカで自らの大空の炎を雲に変換し貯めていたのだろう。
このじじいも、昔からツナの為にと影から様々なサポートをしてきていた。
きっと今回も、無茶をしたのだろう。
ツナの傍で横たわる九代目は、俺からみても炎を消費しすぎて危ない状態であることが分かる。
すぐに救護班を手配しなければ。
「ああ、やっぱり貴方だったんですね。」
ツナが、眉間に皺を寄せながら九代目の手を握りしめる。
恐らく、超直感で感じたのは九代目の危機。
モスカでなんとか雲の炎を貯めようとしたものの、モスカはまだ未完の技術なのだろう。雲雀の攻撃で暴走してしまい、生命の危機になるほど炎を消費してしまった。
このままでは九代目が危うい、という所でツナが救出したのだ。
もし超直感で九代目の危機を感じなかったとしたら、恐らく最悪の事態も起こりえただろう。
「ツナヨシ君…自分を責めてはいけないよ…。」
「九代目!」
「おい九代目、もうしゃべるな!すぐに救護班が到着する!」
弱々しいながらもツナの手を握り返した九代目は、ボンゴレの救護班にすぐに連れられていった。
ザンザスはその様子をただ何も言わずに見送るだけだった。
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