† 集団エゴイスト †
□第十二話 mixture〜交錯〜
2ページ/14ページ
*******
《スクアーロside》
あいつがツナヨシと出会ったのは、ツナヨシがイタリアに来て一週間後のことだった。
日本から初代の血を引く家光の子供を引き取ったことは、ごく一部の者のみが知ることだった。
あいつはその話を聞いた時も、特に興味を抱くでもなく、何の反応も示さなかった。
ツナヨシの優秀さは、ひそやかに、だが瞬く間に広がっていった。
当時次期ボスとして注目されていた者たちが数人いたが、その中の筆頭はザンザスだった。
周りは、ザンザスが次期ボスの座を危ぶみ、日本からきた幼子を亡きものにしようと企むのではと冷や冷やしていたようだが、俺から見れば、そんなのただの杞憂だった。
こいつは、一度だってドンボンゴレの座など望んだことはなかった。
能力が高いというだけで、周りから勝手に崇められ、疑われ、羨まれる。
そこに、こいつの気持ちなど全く関与しないまま…。
ザンザスはそんな周囲に嫌気がさしていたのだろう。
このころには既に、いつも不機嫌で無口な性格となっていた。
こいつが誰かに心を開いている姿など見たことがなかった。
俺は当時、こいつの力にしか興味のないところに惹かれ、また自分と似通ったところを感じ、ザンザスの近くにいることが多かった。
この頃、己の剣を極めたいと願いひたすら修業していた俺だが、力をつけると同時に、己の望みのみを目指すことの難しさを感じていた。
自分に力がつけばつくほど、周りが俺を放っておかなくなった。
仲間に、さもなくば命を奪う…そんな両極端の誘いが尽きることはなく、煩わしさと億劫さでいらだちが募った。
そんななか、ただ自分の力のみを信じ、周りに何も求めないザンザスの周りは、煩わしさが一掃され、気持ちが軽くなった。
他人の見返りなど何も望まない。
信じられるのは己のみ。
それが、俺らの暗黙の了解のようなものだった。
俺との繋がりでしばしばディーノもやってきて、俺ら3人は知らぬ間によく時間をともにすることが多くなった。
普段は騒がしく華やかなディーノも、俺らといるときは打って変わったかのように静かなことが多かった。
次期ファミリーのボスとして生まれたときから確定しているという責任を、時に重荷に感じるらしく、しかし周りにそれを知らせるわけにいかない…そんな煩わしさを紛らわせるのに、気を使わなくてよい俺らの空気がちょうどよかったらしい。
とにかく、俺らは仲間とか友達とか、そんなものではなく、この時はただ似通ったもの同士、気楽な面子で集まっているだけだった。
.