† 集団エゴイスト †
□第十話 fabrication〜捏造〜
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修業が始まり、俺は炎の調整力を着々と身につけていった。
バジル君は本当によく相手を務めてくれた。
時に手本を示し、また時には全力で俺の攻撃に応えてくれた。
おかげで炎を使った戦いというものが大分掴めてきた。
「よし、大分ものになったようだし、次の段階に進むぞ。」
傍らに控えていたリボーンは、こちらに目を凝らしてながら愛銃を手に構えていた。
「もう次の段階にいくの?」
「時間もねーしな。お前はもともと筋も悪くねーし、炎の量も人より多い。問題は継続時間だったがそれも大丈夫だろ。」
「あー確かに。一発弾を撃たれれば、今なら軽く数時間は持つかも。」
「すごいです沢田殿!普通の人間はどんなに訓練を積んでも、せいぜい数十分が限度だと聞いております…!」
そうか、普通はそういうものなのか。じゃあやはりバジル君はかなり無理をして俺の修業に付き合ってくれているんだ…
「…おいツナ、言いたいことは分かるが、そう思うならその分早く上達しろ。それが一番の恩返しだぞ。」
「……うん。」
やはり他人を巻き込んだことに対する罪悪感は、いつまでたっても慣れることはないし、薄れない。
それでも、俺に協力してくれる人がいるのなら、俺はそれに最高の結果を示し感謝の意を返すべきなのだろう。
「次は小言弾での修業だ。死ぬ気弾と違って炎の消費量も半端ねぇ。さっきまでと同じようにはいかねえぞ。」
ジャキッと銃を俺に向けて構えるリボーンからは、どこからか焦りのような不安が感じられた。
「ちょっとまってリボーン。その前に、聞かせてよ。この修業が最終的に行き着くところを…」
リボーンの目は目深に被られた帽子によりはっきりとは見えなかったが、それでも俺の台詞により鋭い光がチカリとしたのが見て取れた。
「え…?行き着くところですか?沢田殿、それは?」
「今の修業はあくまでも最終形態にいきつく為の基礎作りなんだろう。…俺にはリボーンが何か狙いがあってやってるように感じるんだけど…?」
再びちらりとリボーンの顔を伺う。
「…、わかった、説明してやる。お前らにも伝えるべきだろ---」
----トゥルルル…トゥルルル…
リボーンの発言を途中で遮った機械音---誰にでも聞き覚えのある、シンプルな電話の着信音---が、リボーンの上着のポケットから鳴り響いた。
さっとそこから黒い携帯を取り出したリボーンは、ディスプレイに映った文字を見た瞬間眉をおもいっきりしかめ、盛大に舌打ちした。
「緊急の電話だ。話はこの後でする。」
そう言って、リボーンは森の中に一人入っていってしまったのだった。
「緊急の連絡とは…リボーン殿大丈夫でしょうか?まさか何かヴァリアー側に動きがあったとか…?!」
「いや、多分大丈夫だと思うよ。そこまで真剣な感じでもなさそうだったし…弱みを握られてるやつからきた電話とか、恥ずかしくて会話を俺らに聞かれたくないとじゃない?」
「あははは、まさかリボーン殿に限ってそんなこと、」
俺の発言を完璧冗談だと思ったらしいバジル君は、笑いながら軽く否定した。
まあ俺だって本気で言ったわけではないし、あの俺様家庭教師が慌てふためく姿など想像もつかない。
ただ、なんとなくいつもポーカーフェイスなあいつがさっき苦虫を噛んだような顔だったため、少し珍しかった。
「リボーンが帰ってくるまでもう少し休憩してようか。」
「そうですね。夕方は冷えますし、焚火の用意でもしますか。」
そう言って準備に取り掛かる俺達の耳には既に、リボーンの足音も話し声も届かないのだった。