† 集団エゴイスト †
□第七話 Reproduction〜再生〜
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俺は貴方の過去を知らない。
俺は貴方の過去にはまだ存在していない。
こんなにもどかしくて、しかしどうしようもないことが世界にあるだなんて知らなかった。
知るには昔の俺はあまりに無知すぎたんだ。
けれど、今なら分かります。
どうしようもないことを、どうこう言うよりも、これからできることに全力を注ぎ込めばいいんだということを。
だから、俺は過去を知らない自分をもどかしいと思っても、恥じたりはしません。
俺にしかできない役目をくれた神に感謝します。
俺のこの焦りも、この願望も、そしてこの力も、みんなみんな貴方の為に捧げます。
だから、早く思い出して下さい。
・・・早く
・・・・・・・早く
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俺が僅かな記憶を思い出してからの生活は、予想に反してそれほど変わることなく過ぎていった。
いつものようにダメツナの振りをして、いつものように隼人や武(これからは昔の呼び名の方で呼ぶことにした)とつるみ、いつものようにただ平穏な時を過ごしていた。
確かに過去の俺を知っている皆の態度は多少変わったが、基本的に俺のダメツナの振りに付き合ってくれてる為、表面的には以前と同じような態度で接してくれている。
「おいツナっ!!早く帰って一緒に遊ぼうぜっ!!」
「テメー部活はどうした野球馬鹿っ!!というか十代目の肩から腕を離しやがれっ!!」
「あははは、今日は部活は休みなのなー!だから、新作のゲームをツナん家で一緒にやろーと思ってさ♪何?獄寺も一緒にやりてーの?」
「んだとーっ?!誰がテメーなんかと!!いいか、十代目のお側にいつも控えるのが右腕としての俺の使命なんだからな!!テメーはおまけで十代目の側にいられるだけだっ!!」
「あーはいはい。まあ素直に一緒にゲームしてーって言っちまえよ獄寺。」
「だーかーらーッちげーって言ってんだろっ!!」
相変わらずの俺をすっ飛ばして交わされる二人の会話に、ダメツナな俺は辟易しながら仲介に入ろうかどうしようかと戸惑う振りをする。
変わらない日常に甘えたい気持ちと、変わらなければならないのに一向に変わる兆しがない自分に苛立ちを積もらせる気持ちが、俺の心をせき立てる。
「ほら、二人とも俺ん家いくなら早く行こう!;」
それでも、今この時この場所での俺がこうしていられるのはきっと皆のおかげだから…。
だから、早く思い出したいと思うんだ。
自分の封印した記憶を取り戻す為に、俺は何をしたらいいのだろう?
答えのでない問いに、ますます焦りが増す俺の心は、だんだんと加速していっているのだった。
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